こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファヒム パリが見た奇跡

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もっと強くなりたい。もっと豊かになりたい。家族と一緒に暮らしたい。父に連れられて花の都にやってきた少年は、ひたすら腕を磨いて夢を実現しようとする。だが、彼らの前に立ちはだかるのは、外国人に対する司法の壁。物語は、バングラデッシュの天才チェス少年がフランス人師匠と出会い、全仏ジュニア王者になるまでを描く。母とは別れたくはなかった。言葉がまったく通じず心細かった。それでも、才能を認められ友人に恵まれ、少年は程なく異文化を吸収していく。一方で、父は滞在許可が下りないまま仕事探しに明け暮れ、つらい立場に追い込まれていく。すっかりマナーを身につけた少年が父とレストランで食事をするシーン、少年はナイフフォークを器用に使いこなすのに父はいまだに料理を手づかみで口に運ぶ。子供と大人の環境に馴染む速さの違いが印象的だった。

父と共にパリに到着したファヒムはチェスコーチのシルヴァンに入門、たちまち頭角を現す。しかし父子共に不法滞在者として支援センターの世話になる身、なかなか身分が安定しない。

約束から30分遅刻しても平気な父子は、時間を守る大切さを教えられる。モスリムゆえに豚肉も食べられない。フランス語を覚えられない父はインチキ通訳に騙されたりもする。ファヒムは難民センターの子供たちやチェス仲間と積極的に交流、短期間で流暢に会話をこなせるようになり、インチキ通訳と堂々と渡り合うなど、年長者相手にも臆せず己の考えを主張する。このあたり、10歳にも満たない設定なのに非常に大人びて見えるが、明晰な頭脳と稀有な体験をしてきたファヒムは普通の子供たちより精神的な成熟も早いということか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

チェス大会に出場したシルヴァンのチームは無事予選を勝ち上がり、全国大会に進む。そして、予選で対戦したライバルと再び顔を合わせたファヒムは、雪辱を誓う。その間、父の滞在許可を巡って何度もトラブルが発生し、そのたびに権力者の心に訴えていく。なによりも人権を重視するフランス人らしい対応がすがすがしかった。

監督  ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル
出演  アサド・アーメッド/ジェラール・ドパルデュー/ミザヌル・ラハマン/イザベル・ナンティ/ピエール・ゴンム
ナンバー  131
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
http://fahim-movie.com/