こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

思い、思われ、ふり、ふられ

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好きな相手に告白しても断られ、予期せぬ人からの告白で本心に気づく。自分よりも他人の気持ちを大切にする。周りの人々が幸せになれば我慢できる。物語は、そんな自己主張が控えめな高校生男女4人の恋愛模様を描く。親同士が再婚した微妙な距離感の姉弟、彼らと同じマンションに住む内気な女子と好青年。まだまだ将来の夢すら朧げな彼らにとって、半径500メートル以内の人間関係が人生のすべて。丘の上から見下ろせる小さな町の外に何があるかも知らず、世界は完結している。だからこそ、かけがえのないほど美しい。桜の舞う季節、突然の雨、教室の窓から差す光に浮き上がるシルエット、きらめく夜景、昇降台でのすれ違い……。逆光を多用したソフトタッチの映像は、いまアオハルを生きている若者たちだけでなく、青春が遠くなってしまった者の胸にも懐かしい。

同じ高校に通う朱里、理央、由奈、カズの4人はお互いが気になる存在、由奈は思い切って理央にコクるが、あっさりふられる。一方で、朱里は映画作りに夢中のカズが気になっている。

家庭事情と中学時代の因縁から、朱里と理央は複雑な感情を抱きあい、本音を抑えて暮らしている。傷つけてはいけない、それ以上に傷つきたくない。いつも明るい笑顔を振りまいている朱里と、クールにふるまう理央の、封印された過去。それを懸命に隠し、隠しているのを悟られまいとする2人の、大人にならざるを得なかった理由が哀しい。そして、高校という新しい環境で由奈とカズが彼らの間に加わることで、あらためて自身を見つめなおしていく。その成長の過程は、包み込むような慈愛に満ちていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

なぜこれほどまでにやさしくなれるのだろう。なぜもっと思いを吐き出さないのだろう。それは己の苦しみを他人には味合わせたくないからであると同時に、己の苦しみに他人を巻き込みたくないから。親しい仲なのに心のどこかで壁を作っている。それは思いやりかもしれない。だが、やさしさは時として残酷にもなると、彼らの言動は教えてくれる。

監督  三木孝浩
出演  浜辺美波/北村匠海/福本莉子/赤楚衛二/上村海成/ 戸田菜穂
ナンバー  132
オススメ度  ★★★


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