こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マティアス&マキシム

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気が置けない幼馴染だと思っていた。だからこそ、大人になってからついてしまった、有能なビジネスマンとしがないバーテンダーという格差が引っ掛かる。でも、仲間たちと騒いでいる間は対等な関係でいられる。物語は、20数年来の友人同士がふとした弾みでキスしてしまったのを機に自分と相手の本心に気づき、微妙な距離感を測りかねて逡巡する姿を描く。片方はもうすぐ外国に行ってしまう。その前に思いを伝えたい。だが、どうすればいいのかわからない。つい心とは反対の言葉を口にしてつれない態度を取ったりもする。もしかしたら恋? 認めたくはない。カメラは気持ちを抑えきれない2人に寄り添い、友情以上の特別な衝動を抱いてしまった男たちの繊細な感情に迫る。愛した相手が同性の親友、その現実にうまく向き合えない彼らの反応がリアルだ。

パーティの罰ゲームでアマチュア映画に出演、キスシーンを演じたマックスとマットは、その後胸騒ぎが止まらなくなる。マックスは旅支度に、マットは仕事に忙殺され、2人の仲はなかなか縮まらない。

友人宅のパーティやバーでの飲み会など、彼らはちょくちょく顔を合わしている。相手と視線を絡ませても声をかける勇気はない。当たり障りのない会話はできるが、踏み込んだ話は避けている。一方でマックスの出発日は近づいてくる。マックスは母親とのトラブルに悩まされている。マットは接待に気を遣う。それでも、2人の頭の中を占めているのはお互いのことばかり。同性愛に偏見はなくても、いざ己にその性向があると知ったときに否定しようとする、そんな彼らの葛藤が抑制された映像に凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして旅立ちの前日、2人は壁取り払い熱く唇を交わす。美しい恋人もいてビジネスでも波に乗っているマックスの方が、いまいちな日常を送り外国でやり直そうとするマックスよりも輝いて見える。ところが、本当はマットの方がマックスとずっと一緒にいたいと強く願っていた。カネや子育てといった問題がない分、男同士の関係は純粋だ。

監督  グザヴィエ・ドラン
出演  ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス/グザヴィエ・ドラン/ピア・リュック・ファンク/ハリス・ディキンソン
ナンバー  161
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
http://www.phantom-film.com/m-m/