こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ストレイ・ドッグ

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荒れた肌、こけた頬、落ちくぼんだ目、ぼさぼさの髪……。疲れている上に睡眠不足、体臭がにおってきそうな風貌のヒロインは、これがニコール・キッドマンかと思わせるほどの強烈なインパクトを残す。物語は、かつて任務中に仲間を死なせた女刑事がギャングの復讐に対峙する姿を描く。個人的な問題に相棒を巻き込みたくない。同僚からは白い目で見られている。ところが、もみ消したはずの過去が少しずつ明るみに出てくる。それは最愛の人を亡くした事実。さらにグレてしまった娘との関係にも悩んでいる。陰鬱ですさんだ街の風景は彼女の心情を反映し、彼女もまた正義感だけで動く警官ではなく欲望の果てに追い詰められた汚れた人間であると強調する。終始ヒリヒリするような緊張感は、彼女が置かれている瀬戸際の状況を肌で感じさせてくれる。

身元不明の死体が発見され、エリンが現場に急行する。被害者はエリンの知人、17年前の強盗事件の後に消息を絶ったサイラスが再び現れたとエリンは思い込み、決着をつけるために単独で捜査する。

犯行に使われた拳銃からサイラスの行方をたどるエリン。ペトラという情婦がサイラスとの連絡役をしていると関係者から聞き出し、ペトラを張り込む。その間、17年前にサイラスの組織に潜入捜査をした記憶がエリンの脳裏によみがえる。いつ正体がバレるか気が休まらない中で相棒のクリスと感情を交わらせたりもする。その過程で明らかになっていくエリンのモラルの低さ。わずかに残った良心は、娘だけは更生させようとあがいているが、その言い訳がましさには、彼女の底の浅さが凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ペトラを尾行するうちに、新たな銀行強盗に遭遇するエリン。援軍を待たず駆け付けた警官2人と突入し銃撃戦になる。そこで捕まえたペトラから聞かされたサイラスの真実。ただ、あんなオチが許されるのならば、観客はずっとエリンの猿芝居にずっと付き合わされていたことになるのではないか。どんでん返しというには後味が悪く、質の悪い冗談に思えた。

監督  カリン・クサマ
出演  ニコール・キッドマン/トビー・ケベル/タチアナ・マスラニー/スクート・マクネイリー/ブラッドリー・ウィットフォード/セバスチャン・スタン
ナンバー  183
オススメ度  ★★*


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