こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ストックホルム・ケース

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警察は時間稼ぎしかしない。首相には見捨てられた。でも、犯人は気を使ってくれる。物語は、銀行立てこもり事件で、強盗と人質の間に奇妙な協力関係が生まれていく過程を描く。もちろん最初は恐怖におびえていた。隙あらば逃げようと考えていた。ところが、犯人と交渉にあたる警察署長の、人質の危険を顧みない態度や言動に少しずつ不信感を覚えていく。一方で犯人の素性が明らかになるにつれ、彼が根っからの悪党ではなく本当はやさしい男であると理解していく。いつしか人質たちも警察や首相といった権威に対して嫌悪感を抱き、犯人に同情する。狭い空間で同じ空気を吸っている。警察が強行突入してきたらみな死ぬかもしれない。もはや運命共同体の状況では犯人を信用するしかない。情報を遮断された状態で起きる心理の変化が繊細に再現されていた。

米国人を装って銀行に押し入ったラースは女子行員2人と技術者を人質に取り、カネと逃走車、友人のグンナーの釈放を要求する。銀行に現れたグンナーは警察と裏取引をしていた。

人質となったビアンカは子供のことが心配でならない。現場に現れた夫に晩ごはんの作り方を丁寧に説明するなど、自分の安全よりも家族を優先させる彼女に、ラースは冷酷になれない。すでに銀行は包囲されている。長引く籠城、食べ物やたばこを分け合い生理の始まった女子行員のためにタンポンを差し入れさせるなどラースは人間的な心遣いを見せる。この銀行強盗に計画性はあまりない、ラースも悪人になり切れない。ビアンカのラースへの思いは、むしろ頼りにならない夫への気持ちの裏返しだったのではないだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

逃走車両が用意され銀行を出ようとしたラースたちだったが、予期せぬアクシデントで金庫室に戻る。だがそこで外側から鍵を閉められ、完全に脱出不可能。ラースに人質は傷つけられないと警察にも見抜かれている。あまりにも手際が悪い、そんなラースを憎むどころか共感してしまうビアンカ。彼女もまた、愛情に飢えていた善人なのだろう。。。

監督  ロバート・バドロー
出演  イーサン・ホーク/ノオミ・ラパス/マーク・ストロング/ビー・サントス/クリストファー・ハイアーダール
ナンバー  194
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
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