こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

100日間のシンプルライフ 

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着るものはない。食べ物もない。与えられたのはだだっ広い空間。どれだけシンプルに暮らせるかを競う2人の男は、そこでなにが必要かを学んでいく。物語は、文字通り裸から始めて1日1アイテムずつを取り戻すルールの下、主人公の2人が世俗の欲望に塗れた己の人生を見直していく過程を描く。酔ったはずみの冗談のつもりだった。だが大勢の証人がいて、後には退けない。共同経営する会社の方針を巡る意見の食い違いもあり、真剣勝負の意味合いを帯びてくる。起業して成功するだけでは物足りない。その先にあるのはさらなる成功か、それとも人と人のつながりか。いかつい警護車両に守られた米国IT長者の小さなEVは、エコの仮面を被った貪欲な人間を強烈に皮肉っていた。

夜毎に許された私物のピックアップに向かった先の倉庫で、トニーはルーシーという謎めいた美女に恋をする。祖母を見舞ったパウルは病院でルーシーを見かけ、彼女の秘密を知る。

雪が積もる深夜のベルリン、靴も履かずに全裸で街を走るトニーとパウル。トニーが最初に選んだのはシュラフパウルはコート。その後もひとつずつ身につける必需品を選んでいく。パウルは自らが開発したスマホ人工知能アプリ・ナナを手放せない。一方のトニーは、ルーシーとの交際で精神の平衡を保っている。そして親友の2人の過去が少しずつ明らかにされていくが、彼らももう30代後半、心に抱えている葛藤は深く、10代の頃のように純粋な友情のみで結びついているわけではない。ガールフレンドを巡って起きた軋轢など複雑な思いを抱いていたなど、ずっとそばにいたからこそ起きる感情の齟齬が濃やかに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その間、IT長者の買収や引き抜き工作があったりして、いつの間にかミニマル生活競争はおざなりになる。さらにルーシーが突然姿を消したのを機に、トニーとパウルの間に決定的な亀裂が入る。結局、男の友情を壊すのはカネと女。煩悩を捨てれば平和に生きられるとこの作品は訴えるが、アプローチの仕方違うのでは。。。

監督  フロリアン・ダービト・フィッツ
出演  フロリアン・ダービト・フィッツ/マティアス・シュバイクホファー/ミリアム・シュタイン/ハンネローレ・エルスナー/ヴォルフガング・シュトゥンフ/カタリナ・タルバッハ
ナンバー  216
オススメ度  ★★*


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