こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ソング・トゥ・ソング 

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男と女、恋と友情、仕事とセックス。音楽にかかわる人々が織りなす人間模様は複雑に絡み合いお互いに影響を与え続ける。それは彼らにとって期待していた運命なのか。それとも偶然の出会いが産んだ帰結なのか。物語は、ミュージシャンの街に集まったもう若くない男女の魂の彷徨を描く。いまだ自分探し中の女、成功してもさらなる成功を欲する男、歌で有名になりたい男、生活のために働く女。彼らの人生は少しずつ交わり、愛と憎悪が生まれていく。ところが、その生々しい感情も、洗練された構図のなかで一番美しい光のをとらえた映像の中では、詩情に昇華されていく。ルーニー・マーラの儚さとライアン・ゴスリングの繊細さ、マイケル・ファスベンダーの傲慢さとナタリー・ポートマンの謙虚さが見事にシンクロしていた。

定職のないフェイは大物プロデューサー・クックと交際していたが、シンガーソングライターのBVとも付き合い始める。クックはダイナーで生活のために働くウエイトレス・ロンダに声をかける。

クックといるときはどこか陰を引きずっていたフェイは、BVとのデートでは輝くような笑顔を見せる。オープンカーでのドライブ、荒野で見る夕日、アパートの高層階からの眺望。カネも影響力もあるクックには “囲われている感” しかなかったのに、ラブソングを歌うBVは自由を感じさせてくれる。恋愛は立場が対等な関係の方が絶対に楽しい、相手に対して打算のないフェイとBVの姿は、失うものが何もない方がより大胆になれると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

セリフよりモノローグ、ストーリーより断片的なエピソード。テレンス・マリックの流麗な映像詩はこの作品でも他の追随を許さない独特のリズムを刻む。21世紀の初頭までのように「寡作の巨匠」と呼ばれていたころは、その手法も非常に新鮮かつ印象的だった。だが、毎年のように新作が見られるようになると珍しさも失せる。確かに構図と画力は心にしみるインパクトを持っている。それでも、なにかひとつでいい、驚きやときめきが欲しかった。

監督  テレンス・マリック
出演  マイケル・ファスベンダー/ライアン・ゴズリング/ルーニー・マーラ/ナタリー・ポートマン/ケイト・ブランシェット/ホリー・ハンター/バル・キルマー
ナンバー  230
オススメ度  ★★*


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