ずっと本心を抑えて生きてきた。バカにされても耐えるしかなかった。でも、夢を叶えた幼馴染と再会した時、彼は己のあるべき姿をもう一度見つめなおす。物語は、少年の頃「ミス・フランスになりたい」と宣言して笑われた主人公が周囲の協力を得て夢にチャレンジする過程を追う。シェアハウスの仲間たちは変人ばかりだけれど大賛成、どうすれば女らしく自己表現できるかを教えてくれる。ボクサーでもある友人は自信こそが最大の武器と、メンタルを鍛えてくれる。そしてエントリーした地区予選。髪を整えメークを施しコルセットでくびれを作りハイヒールを履く彼は、どの候補者よりも女性的。外見のみならずマナーや心遣いまで美しさを追求するコンテストの存在意義に疑問を突きつける。“女らしさ” とは、女にしか持ちえない美徳なのかと。
フランス1の美女を目指すアレックスは女装売春夫・ローラの指導でみるみる変貌していく。予選会で参加した動機を問われ、司会者に媚びることなく女性蔑視への抵抗と答える。
まだまだセクハラ・パワハラ男が幅を利かせている。女たちは “non” と言えない。一方、ジェンダーフリーに理解を示さないのはたいてい男と体験的に知っているアレックスは、はっきりと批判を口にする。ところがその主張の正しさが評価され、アレックスはパリ首都圏地区の代表に選ばれる。そして集った、フランス16地区から集まった美女たち。彼女たちは「ミス・フランス」にふさわしい振る舞いを身につけるための合宿に参加する。その間、男の体を隠し続ける苦労もあるが、アレックスはむしろ他の候補者と打ち解けないことを指摘され落ち込む。自分に偽らずにいると周囲をだまし続けなければならない。アレックスの苦悩と葛藤がリアルに再現されていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
そして紆余曲折を経たのちの決勝の舞台。アレックスの大胆な行動に賛同する拍手が大勢を占める。主催者側のディレクター・アマンダもむしろその変化を歓迎している。“女らしさ” という価値観が逆転する作品だった。
監督 ルーベン・アウベス
出演 アレクサンドル・ベテール/パスカル・アルビロ/イザベル・ナンティ/ティボール・ド・モンタレンベール/ステフィ・セルマ
ナンバー 35
オススメ度 ★★*