こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

逃げた女

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愛する人とは絶対に一緒にいるべき”。夫婦仲について問われると、女は必ずそう答える。だが彼女自身その言葉を信じていないかのよう。。。物語は、夫の出張中に知人を訪ね歩く女の言動を追う。久しぶりに会う先輩たちも友人も、古い世代のように男に依存して生きているわけではない。みな仕事を持ち、一応自立したリア充人生を送っている。自慢はしないが、少なくとも他人の目にはそう映ってほしいと願っている。一方で、ヒロインと彼女たちの会話の中で浮き彫りにされていくのは日常の些細な齟齬。幸せそうに見えて実は問題だらけなのか、問題だらけだけれどもそれも含めて幸せなのか。過去に親密な時期があったのに今は少し疎遠になってしまったか。だからこそ垣間見える微妙な人間関係の綾がリアルに再現されていた。

郊外に住むヨンスンの家を訪ねたガミは、ヨンスンのルームメイトとともに食事をしながら近況報告や思い出話にふける。そこに、引っ越してきたばかりの隣人が猫のことでクレームをつけてくる。

苦情を訴える男の言い分は至極まっとうなのに、応対したルームメイトは餌だけやってあとは野放しにしていることに筋違いの言い訳をする。まったくかみ合わない彼らの会話はすごく丁寧な言葉づかいでやり取りされ、罵り合いにまでは発展しない。結局話が通じないと男はあきらめる。動物愛護を免罪符に他人の迷惑を考えない彼女たちの言い分には非常な不快感が残り、新興住宅地でのご近所づきあいの難しさを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後も、スヨンの独身ライフを聞かされたり、映画館を運営するウジンと再会したり。さらに訳ありのチョン先生ともばったり顔を合わせる。チョン先生とは恋愛トラブルがあり、ウジンも絡んでいるが、はっきりしたことはわからない。会話の端々から感じられるのはガミが何か大きな秘密を抱えていること。夫との仲良し話は偽装で、ガミこそが夫から「逃げた女」なのだろう。ただ、ほのめかすばかりの映像は想像力をあまり刺激してくれなかった。

監督  ホン・サンス
出演  キム・ミニ/ソ・ヨンファ/ソン・ソンミ/キム・セビョク/クォン・ヘヒョ
ナンバー  109
オススメ度  ★★*


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