ずっと疑問に思っていた。なぜ女だけが家事をしなければならないの。男の子を産めと言われ、育児のために仕事をやめなければならないの。でも、それを口にすると非難される。男よりもむしろ年配の女に。。。物語は、妻や母の役割を期待される女の葛藤を描く。子供のころから男が優先されてきた。父がいちばん偉く、次女であるヒロインのランクは弟よりも下。優しい夫は一応理解してくれるけれど、まだまだ伝統的な考えも抜けきらない。いつしか彼女はひとりで世間と闘っている気になり精神状態が不安定になっていく。実母や慕っていた先輩に “憑依” され、心に溜まった澱を吐き出すのだ。そこには長年の慣習に抑圧されてきた女たちの怨念がこもっていて、儒教を道徳の基礎に置く世界の息苦しさを象徴する。
夫の実家に帰省したジヨンは、女は男に尽くすべきと決めつける姑から散々イヤミを言われ気分を害する。それ以降、少女の頃からの、女に生まれて損してきた苦い経験を思い出す。
母親の世代は、女は将来の夢を持つことも許されず、男きょうだいの学費稼ぎのために働いた。母はジヨンに同じ思いをさせまいとするが、父や弟はいまだ家庭内ではふんぞり返り、片付けを手伝おうともしない。大卒の学歴も専業主婦には何の価値もなく、保育園の高学歴ママ友と愚痴を言い合うばかり。会社員時代も重要な案件は男に回され、結果を残しても評価されない。もはやジヨンの眼差しは憎しみすら湛えている。セルフカフェでジヨンに皮肉を言う独身男女にきっちり言い返すシーンは、あらゆる子育て中ママの怨嗟と怒りを代弁していた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
男社会に負けず起業した先輩女社長に連絡を取ると、ウチに来ないかと誘われるジヨン。その気になりベビーシッターを探すが見つからず、夫が育休を申し出たにもにもかかわらず、なかなか準備は整わない。女が “自分らしく生きる” ためにクリアしないといけないハードルはいったいいくつあるのか。ギリギリで踏ん張って走り始めた彼女は、すべてのワーキングマザーの希望だ。
監督 キム・ドヨン
出演 チョン・ユミ/コン・ユ/キム・ミギョン/コン・ミンジョン/パク・ソンヨン/キム・ソンチョル
ナンバー 171
オススメ度 ★★★