こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Bittersand

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忌まわしい記憶を封印したままさえない人生を送ってきた。そこに偶然蘇ってきた過去。乗り越えなければ前に進めないと知った若者は、決着をつけるために動き出す。物語は、高校時代に同じクラスの女子を深く傷つけた男が彼女と再会し、真実を掘り起こしていく過程を描く。自分が悪者になることでとっさに彼女をかばおうとした。結果は予想していたが想定外の大切なものまで失ってしまった。7年経った今なら冷静な気持ちで事件と向き合えるのではないか。そう考えた彼は、親友に背中を押されながらも自らの今と未来を変えるために彼女に接近する。しかし彼女の深手は癒えておらず門前払いを食うばかり。それでもあきらめずに説得する主人公。きらめきに満ちた思い出とは違うほろ苦くつらい映像は、青春の苦悩を等身大に再現していた。

街で恐喝にあった暁人は絵莉子に助けられ、ラブホに逃げ込む。暁人は高3の時、絵莉子を誹謗する落書きを残した犯人ということになっていた。そんなある日、同窓会の案内が暁人に届く。

あの時泥をかぶったのを、親友の有介だけは知っている。有介は、絵莉子に本当のことを知らせる絶好のチャンスと暁人をたきつける。当然、暁人が絵莉子に会いに行っても気まずい空気が流れるだけ。まだまだ夢を追いかけている絵莉子の前で、しがない営業マンと自分を卑下する暁人は半ば人生を投げ出しているようだった。一応、定職に就いているのに将来に希望を見出せない暁人の現在が切なかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして同窓会当日、参加者は少ないが関係者はそろっている。そこで明かされる、誰も知らなかった秘密と、忘れた振りしてきた事実が浮き彫りにされる。まだ何者でもなかった高校時代、スクールカーストがあっても、基本的にフラットな関係だった。それがたった7年で早くも格差が生じている現実。だが幸福の基準は人それぞれ違う、最悪の出来事も発想を転換すればいいきっかけと思える時が来るかもしれない。退学した同級生の笑顔は “塞翁が馬” 故事を思い出させてくれる。

監督  杉岡知哉
出演  井上祐貴/萩原利久/木下彩音/森田望智/柾木玲弥/小野花梨/溝口奈菜/遠藤史也/搗宮姫奈/宗綱弟
ナンバー  78
オススメ度  ★★★


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