こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

白頭山大噴火

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大地から巨大な波動が伝わってくる。北の首都は崩壊した。まもなく大蛇のようなうねりにのみこまれた南の首都も、道路が陥没し高層ビルが倒壊する。物語は、巨大火山噴火の被害を最小限に食い止めるために召集された決死隊の奮闘を描く。極秘計画ゆえ、十分な準備も援護もなく乗り込んだ敵地。そこではまだ残党が銃を構えている。案内役に選ばれた男はいつ裏切るかもしれない二重スパイ。さらに同盟国の米軍から襲撃されたり、中国勢力が暗躍したり。それでも、家族を守るため、祖国を救うため、前に進み続けるしかない。絶望的な状況で弱音を吐く隊長を、皮肉のこもった言動で彼を支えるスパイ。食わせ物のようで心の奥にある「義」がまだ死んでいないスパイを演じたイ・ビョンホンが圧倒的な存在感を示していた。

中朝国境の白頭山が噴火、半島に大災害をもたらす。マグマの大量噴出を防ぐために火山近くの坑道で核爆発させるプランが浮上、韓国軍爆発物処理班のチョ大尉は小隊を率いて国境を越える。

北のICBMから核物質を盗み、白頭山付近まで運ばなければならない。不可能と思えるミッションのカギを握る男・リに、チョは接触する。リは筋金入りの工作員、実戦経験のないチョの部隊は彼に振り回される。いきなり全責任を押し付けられあたふたするチョに対し、あくまで冷静に今後の展開を予想してプランを練るリ。彼の腹の内が読めないうちは味方として信頼できない。だから手錠は外さない。一方のリも、手錠などいつでも外せるし戦闘部隊でもないチョの小隊など簡単に始末できるのにそれをしない。時折中国語で電話をするリの底知れぬ不気味さは、この地域の利権をめぐって暗躍する勢力の複雑さを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

核物質を手に入れたチョたちは米軍の干渉を受ける。このあたり、米韓同盟下で韓国に主権などないと暗示する。そして、虚構と裏切りの世界で生きてきたリが、唯一真実と思える選択をする。守るべき大切なものがある人間はどこまでも強くなれるとこの作品は教えてくれる。

監督  イ・ヘジュン/キム・ビョンウ
出演  イ・ビョンホン/ハ・ジョンウ/マ・ドンソク/チョン・ヘジン/ペ・スジ
ナンバー  98
オススメ度  ★★★*


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