こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サタデー・フィクション

誰が味方で誰を信じればいいのか。大義に殉ずる覚悟はできているが、果たして己の行動は正しいのか。さまざまな陣営が入り乱れそれぞれの思惑が交錯する魔都、女は人生をかけたミッションに挑む。物語は、太平洋戦争開戦直前の上海、日本軍の最高機密を盗み取ろうするスパイたちの暗躍を描く。中国人スター女優の正体はフランス人に育てられたスパイ、舞台と現実を巧みに使い分け、近づいてくる他派閥の中国人を翻弄する。日本人が我が物顔に闊歩し、欧州人の間にも危機感が高まっている。そして赴任してきた日本軍の暗号将校。女優は偶然を装い彼に接近し、潜在意識をハッキングしようとする。モノクロのしっとりとした映像は、古い東洋文化の上に先進的な西洋文化を無理やり上塗りしたような街や人々の虚構をスタイリッシュに再現していた。

1941年12月1日、女優のユーは舞台公演のために上海を訪れ、フランス租界にあるホテルに宿泊する。2日、重慶政府の女スパイがファンと称して彼女に接触してくる。

3日、日本海軍の古谷少佐が上海入りし、駐留日本軍要人に暗号の変更を伝える。いよいよ日米が火蓋を切ろうとしている。その正確な日時と場所を探り出そうと、ユーと彼女を支援するフランス人・フレデリックが動き出す。その間、ユーは「スパイ」と「女」巧みに使い分けて、身柄を押さえられている彼女の夫や舞台監督を操り、彼女の思惑通りに彼らを動かしていく。だがすべての黒幕はフレデリック、ユーを持ち駒のように操るために40年近い年月をかけたのだろう。その気の遠くなる時間に、諜報活動人材を育てる苦労がしのばれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、古谷を生け捕りにして自白させる作戦を決行、狙撃の混乱にまぎれ古谷を拉致するシーンは緊張感とリアリティにあふれ、ユーが拳銃を撃つ姿は洗練されたエレガントさに満ちていた。それにしても、「北」「南」「鎌倉」etc. 暗号に変換された言葉の意味が集まった陸軍幹部に古谷の口から解説されるが、「トルコ風呂」はどういう意味だったのだろう?

監督     ロウ・イエ
出演     コン・リー/マーク・チャオ/パスカル・グレゴリー/トム・ブラシア/ホァン・シャリー/中島歩/ワン・チュアンジュン/チャン・ソンウェン/オダギリジョー
ナンバー     202
オススメ度     ★★★*


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