こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シュシュシュの娘

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余命わずかな祖父から託されたミッションは、無念の死を遂げた知人の仇討ち。このまま巨悪をのさばらせてはいけない。戦って正義を実現させなければいけない。特になすべきこともなく平凡な人生を送ってきた女は祖父の言葉に一念発起する。物語は、市役所勤務のOLが己の体に流れる血だけを根拠にスパイ活動をはじめ、外国人差別主義者たちを懲らしめようとする姿を描く。受け継いだ秘伝書に残っていたのは衣装のデザインだけ、それでも今の自分にできることは何か、やらなければならないことは何かを懸命に考え、不安を押し殺して暗躍する。アメコミヒーローのように機能的で洗練されてはいないけれど、いかにもなオーラを発散する手作り感あふれるコスチュームは、この作品のチープな世界観を象徴していた。

要介護の祖父と暮らす未宇は市役所先輩・間野を慕っていたが、間野は祖父に相談を持ち掛けた翌日自殺する。未宇は祖父から、間野が隠したUSBを市長派の職員よりも先に入手しろと命じられる。

地元では、移民労働者を締め出す条例が成立しようとしている。間野も祖父も反対だが、間野は推進派の上司から公文書改ざんを命じられ苦しんでいた。USBにはその証拠となる動画が収められている。普段からちくわの穴の煮汁を飛ばすのが好きな未宇が思いがけずその特技を使うシーンはコミカルで楽しい。外国人排斥運動や自警団による直接的な暴力・過激なビラなどの設定は戦時中を連想させるが、それらは異質なものを認めないネットユーザーからの同調圧力によって自由な発言が炎上・謝罪に追い込まれていく現代の日本を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

奮闘むなしく未宇は一敗地にまみれるが、自身を見直すため、家業を立て直すために改めて修行する。だが、技を教えてくれる祖父はいない。復讐のために必要な知識は書籍から、格闘術・暗殺術は動画から学ぶあたりがいかにも21世紀的だった。ただ、技術的な問題なのか、映像が暗く音声も不鮮明。このあたりのクオリティにもっとこだわってほしかった。

監督  入江悠
出演  福田沙紀/吉岡睦雄/根矢涼香/宇野祥平/金谷真由美/井浦新
ナンバー  152
オススメ度  ★★*


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