こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

花腐し

女には苦労させられた。女の嫌なところをさんざん見てきた。女とセックスをファンタジーに加工してきた男たちは、お互いに人生でただひとり本気で愛した女の記憶を語り合う。物語は、偶然知り合った男たちが酒を酌み交わしながらかつて同棲した女とのエピソードを披露し合う姿を描く。2人共ポルノ映像関係の仕事にかかわっている。女の裸とセックスは性欲の対象でしかない。それでも、彼女を好きになった気持ちだけははっきりと覚えている。ありふれたきっかけで出会った。意気投合し夢を共に追う仲になった。すぐに彼女の部屋に転がり込んだ。だが一緒に暮らすうちに情熱は色あせ、相手の嫌な部分ばかりが目に入り、些細なことでケンカするようになる。男たちの思いやりのない言葉に傷つき、それでも空元気を見せる女の笑顔が哀しかった。

アパートに居座る伊関を立ち退かせようとするピンク映画監督の栩谷は部屋に招き入れられ、身の上話を聞かされる。伊関はかつてシナリオライターを目指し、新進女優の祥子と交際していた。

有名になりたい祥子は創作意欲がわかない伊関を明るく励まし、ワープロに向かわせえる。伊関に才能はなく、少しずつではあるが前に進んでいる祥子との間に溝が生まれ始める。妊娠を機に、伊関は正業に就こうとするが、祥子は堕胎して女優をあきらめないと宣言する。祥子に差をつけられて嫉妬する伊関。このあたり、男のプライドなど、己の器の小ささを公言しているだけで何の役にも立たないと訴える。一方、栩谷の自殺した恋人も祥子、細々と女優を続けていて栩谷はヒモ状態で彼女と付き合っていた。監督作品を長らく撮っていない栩谷が、不況産業にしがみつくしかない男の悲哀を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

夜も更け、場所を変えて飲み明かすうちに、2人が話している祥子は同じ女だったと気づく。伊関も栩谷も結局祥子を幸せにしてやれなかった。その後悔を共有しながら、また目の前に裸の女がいるとセックスしてしまう。そんな彼らの「どうしようもなさ」が切なかった。

監督     荒井晴彦
出演     綾野剛/柄本佑/さとうほなみ/吉岡睦雄/MINAMO/Nia/マキタスポーツ/山崎ハコ/赤座美代子/奥田瑛二
ナンバー     206
オススメ度     ★★★★


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