こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

総理の夫

f:id:otello:20210928164540j:plain

空港に降り立った途端、レポーターに囲まれた。広報官と名乗る女に無理やりクルマに押し込められ、勝手な行動はするなと申し渡された。物語は、妻が総理大臣になった男の、戸惑いと葛藤を描く。政治の世界には全く興味がないのに自分までVIP扱いされる。それでも、日本を住みやすい国に変えようと日々身を粉にして働いている妻の足を引っ張りたくない。一方で、大好きな研究が疎かになるのは我慢できない。もはや「総理の夫」として、普通の人のような自由はない。仕事と家庭の二者択一を迫られた男は、初めてだらけのことにいちいち驚き、なんとか解決しようと努力する。女性の社会進出をさらに促すには、夫の理解が必要なのは理解している。だが、いざ当事者になると慌てふためく男のエゴがドタバタ調で綴られる。

出張から戻ってきた日和は妻の凛子が総理大臣になったと知らされる。環境が急激に変化した上あちこち引き回された日和は疲れ果て、屋敷の玄関で寝てしまう。凛子は日和をやさしく見守る。

豪邸から総理公邸に引っ越した日和。あらゆるところに監視カメラが設置されていて、プライバシーはない。勤務先の鳥類研究所へは広報官が送迎し、日中の行動はGPSアプリ入りスマホで管理されている。凛子の政権は権力基盤が弱く連立与党頼み。早速、日和はスキャンダルのネタにされて脅される。ところが、凛子は思わぬ神対応を見せ敵対者すら味方につけてしまう。どんな時でも決して感情的にならず、相手の顔を立てながら己の意志を通す凛子。こんな指導者なら成熟した社会にふさわしいと思えると同時に、彼女の微笑には有無を言わせぬ威圧感があった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、日和に降りかかる出来事が誇張されすぎていて正視するのがつらい。田中圭のファンを対象にしているにしても少しやりすぎではないか。クライマックスの大熱弁は、大上段に構えた正論にもかかわらず、確かに彼の口から出ると共感を得られやすい。ならば、予定調和的ではなく、もう一歩踏み込んだ結末を用意してほしかった。

監督     河合勇人
出演     田中圭/中谷美紀/貫地谷しほり/工藤阿須加/ 松井愛/木下ほうか/片岡愛之助/嶋田久作/余貴美子/岸部一徳
ナンバー     172
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
https://first-gentleman.jp/