こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

クーリエ 最高機密の運び屋

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指導者の精神状態は常軌を逸している。このままでは全面核戦争が起きる。止められるのは「敵」だけ。物語は、祖国の機密情報を敵対陣営に売り渡そうとする高官と、彼の情報を運ぶセールスマンの葛藤を描く。セールスマンは政府機関の職員ではない素人だから疑われない。高官も偽装した身分で彼に接触し、資料を手渡す。室内ではどこにいても盗聴されている。屋外では誰からも見張られている気がする。緊張と重圧に押しつぶされそうになりながら、己のやっていることが正しいと信じる彼らの姿は、小さな個人の勇気でも世界を変えられると教えてくれる。電子機器などなかった時代、書類を撮影したマイクロフィルムは手渡しするしかなかった。アナログな手法だが、現代なら秘密を守るにはかえって好都合なのではと思える。

ソ連の高官・オレグが米国に送ったメッセージを受け、MI6から依頼を受けたグレヴィルがモスクワに飛ぶ。2人はビジネス名目で接触、裏切り者とスパイの立場だったがすぐに打ち解けていく。

オレグはフルシチョフと面識があるほどのVIP。安全保障上の機密にも接触する権限がある。彼が持ち出すのは核兵器とミサイル配備に関する、米国が喉から手が出るほど欲しがっていた資料。グレヴィルは薄々感づきながらも自分の安全を守るため気づかぬふりを通している。何度も面談を重ねるうちに2人は固い信頼関係を結んでいく。その過程はスリリングかつサスペンスフル、命がけで行動を共にした男たちだけが得られる共犯意識こそが深い友情につながることを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてキューバ危機が勃発、オレグが持ち出した写真をもとに米国は強硬な姿勢を貫く。核戦争は回避されるがMI6はオレグを見捨て、義憤に駆られたグレヴィルとCIAの女工作員が彼を救出に向かう。最初から汚れ仕事だった。バレたら処刑されるとわかっていた。それでも、誰かを救うためという信念を貫いた彼らは美しい。骨と皮だけになるまでやつれた肉体がグレヴィルの苦悩と精神力をリアルに体感させてくれる。

監督     ドミニク・クック
出演     ベネディクト・カンバーバッチ/メラーブ・ニニッゼ/レイチェル・ブロズナハン/ジェシー・バックリー/アンガス・ライト
ナンバー     173
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://www.courier-movie.jp/