こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヴァチカンのエクソシスト

若者に憑依した悪魔は言葉巧みに煽られて、豚に乗り移る。周囲の人や物を動かしたり若者の肉体を傷つけたりと物理的な作用をもたらすほど霊的エネルギーが強いのに、コロッとだまされる悪魔ってなんか頭が悪そう。物語は、ローマ教皇の命を受けて悪魔祓い師となった神父の闘いを描く。悪魔となった堕天使は200人いるという。中世ヨーロッパでは悪魔の存在が記録に残っている。イタリア人に憑依したのになぜか現代英語を話しスラングまで知っている。他人の過去や後悔、トラウマまで見透かすのに、ラテン語の祈りには弱い。そもそも人間に憑依することで何をしたいかというと、神の名を汚したいだけ。カトリック的価値観に疎い者にとってこの悪魔は、厳格な親に育てられた子供が反抗期を迎えて非行に走っているようにしか見えなかった。

イタリアでの祓魔を終えたアモルト神父はスペインの廃修道院に引っ越してきた米国人母子家庭の元に派遣される。そこでは長男が憑依され、アモルトの到着を待っていた。

その悪魔はかつてアモルトに祓われた悪魔で、リベンジのチャンスをうかがっている。今度はアモルトの記憶を探り、彼がずっと抱えていた苦悩を見透かす。助手のトマース神父も姦淫を指摘され言葉を失ったりする。アモルトは悪魔の正体を知るために修道院カタコンベに入り、封印された忌まわしい歴史を紐解いていく。このあたり謎解きの要素も少しあるが所詮は悪魔の所業、合理的論理的な思考法では全く追いつかない。それでも中世ヨーロッパでは信じられていて、教会という巨大な権力の基盤を支えていたという事実が恐ろしかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

エクソシスト」の時代ならホラー映画として楽しめたのだろうが、実在したというアモルトの祓魔術を見せられるだけで特に新しい視点はない。むしろアモルト教皇直属だったこと、バチカンの図書館に自由に出入りできる身分を得たことなどを考えると、エクソシズム自体が壮大なやらせと思えてきた。ローマでの公聴会では英語が公式言語なのには驚いたが。

監督     ジュリアス・エイバリー
出演     ラッセル・クロウ/ダニエル・ゾバット/アレックス・エッソー/フランコ・ネロ
ナンバー     134
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
https://www.vatican-exorcist.jp/