こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アイス・ロード

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スピードを上げれば振動が、ゆっくり走れば重量が、足元の分厚い氷を壊してしまう。冬の終わりが近い北極圏、道路代わりの凍った川がそろそろ解け始める。重くて大きな荷物を積んだ3台のトラックが地平線まで続く一本道をひた走るシーンは壮観だ。物語は、特命を帯びたドライバーたちの奮闘を追う。30時間以内に荷物を運ばなければ仲間が大勢死ぬ。間に合わせるには危険な道を進むしかない。命がけのミッションに志願した男女はあらゆる運転技術を駆使してアイスロードを疾走する。確かにスピード感はない。だが加速減速停止といった基本的な動力性能が圧倒的な重量感を持ち、一度バランスを崩すと簡単には立て直しのきかないトラックを扱う難しさがリアルに再現されていた。横転してもすぐに立て直せるのは意外だった。

鉱山に閉じ込められた坑夫の救出装置の輸送を請け負ったマイクは弟の整備士・ガーディを相棒にハンドルを握る。彼のほかに、ジムとタントゥーがそれぞれ装置を積んだトラックに乗り込む。

夜間は順調だった道のりも日が昇ると氷がゆるみ、ジムが早々と脱落する。タントゥーのトラックに同乗する保険査定人・バルネイはタントゥーを疑い、ドライバーたちの信頼関係にひびが入る。マイクにとって今や信頼できるのはガーディだけ、先住民族の女・タントゥーは黒人のジムからは理解されているが白人のバルネイには露骨に白眼視されている。このあたり、人種問題だけでなく、労働者と知的職業の対立にも触れ、いまだ根強く残るマイノリティへの偏見が浮き彫りにされていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

鉱山爆発の裏にあった秘密が徐々に明らかになるにつれ、マイクも少しずつ真実に気づいていくが、彼のトラックもまた割れた氷にタイヤを取られたりする。普通乗用車で使いことはまずないが、“働くクルマ” にはウインチが必需品であると初めて知った。「恐怖の報酬」をアップデートした展開にはずっと手に汗を握りっぱなしで、真面目に仕事に打ち込む労働者たちの誇り高さと責任感の強さが印象的だった。

監督     ジョナサン・ヘンズリー
出演     リーアム・ニーソン/ベンジャミン・ウォーカー/ アンバー・ミッドサンダー/マーカス・トーマス/ローレンス・フィッシュバーン
ナンバー     205
オススメ度     ★★★


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