こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

決戦は日曜日

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待機中は背筋をぴんと伸ばし気配を消している。謝罪の言葉を口にしては頭を深々と下げる。常に口元に笑みを含み、言うべき不満も何重にもオブラートに包んで遠回し。物語は、父の地盤を継いで衆院選に出馬した中年女と、彼女を補佐する若い秘書の奮闘を描く。志は高いが政治をまったくわかっていない。旧態然とした慣習に異議を唱えて支援者を怒らせてしまう。利権システムに組み込まれた地方都市、己の正義だけを信じて突き進む彼女に、秘書はブレーキをかけなだめすかし人との付き合い方を伝える。汚職もスキャンダルも、何十年もの間なぁなぁで済まされてきた男社会に敢然と斬りこんでいく彼女と、振り回され尻拭いする秘書の奔走がコミカルだ。閉塞感に満ちた21世紀の日本を変えるのは、彼らのような異端者に違いない。

病に倒れた父の代わりに候補に担ぎ上げられたゆみ。地元有力者のさまざまな注文に耐えきれず、わがままな行動に走る。秘書の谷村は彼女の気持ちに寄り添って機嫌を取ろうとする。

自分の発言がどういう影響を与えるか考えずに、思ったままを口にするゆみ。SNSで炎上し市民の抗議も受けるが、涼しい顔で受け流す。国会議員の権力という蜜に群がる地元議員や企業とは一線を画して理想を語る姿は、少し調子はずれ。一方で男たちに忖度しない姿勢は潔い。谷村は己のキャリアの中で、あらゆる理不尽に対する忍耐を学んできたが、ゆみと支援者の板挟みになって困惑するばかり。それでも、古い価値観が停滞をもたらしてきたのは自覚していて、ゆみに期待を抱いたりもする。決して感情を露わにせず黒子に徹する。そんな秘書たちの振る舞いは、“仕事” とは何かを教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

熱意だけでは変革できないと悟ったゆみは、むしろ落選を願い谷村に相談、同意した谷村はゆみ陣営のダメージになる情報を拡散させる。ところが彼らの意図とは逆に、正直な候補者という印象を有権者に与える。思い通りにならないことばかりでも、信じた道を突き進めば光明は見えるとこの作品は訴える。

監督     坂下雄一郎
出演     窪田正孝/宮沢りえ/赤楚衛二/内田慈/小市慢太郎/ 音尾琢真
ナンバー     6
オススメ度     ★★★


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