こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド

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長身イケメン透き通った青い瞳に控えめなほほえみ。口を開けばとろけるような口説き文句、ダンスもやさしくリードしてくれる。物語は、研究者の道を選んだ女が、アンドロイドと暮らすうちに愛を取り戻していく過程を描く。掃除も片付けも料理も得意、豊富な知識と検索能力はあらゆるトラブルを瞬く間に解決してしまう。だが、そんなアンドロイドの完璧ぶりを彼女は許容できず無礼な態度をとってしまったりする。それでも柔和な表情を崩さない彼に、データ化できない複雑な女心があることを教えていく彼女。喜怒哀楽はそれなりにプログラムされている。自らの学習能力でさらに相手の胸中を慮ることを学んでいく。アンドロイドが “理想の彼” に洗練されていく姿は、テクノロジーが人間の孤独を癒す時代なったと訴える。

3週間の契約で恋人型アンドロイド・トムを預かったアルマ。ミュージアムに勤務するアルマは、前夫との離婚で受けた心の傷を忘れるため、古代楔形文字の研究に没頭していた。

朝目覚めると、散らかっていたリビングルームは整理整頓され朝食のパンケーキまで用意されている。完璧な仕事ぶりにアルマはむしろ嫌悪感を覚える。せっかくきれいにしたのに寸分たがわず元の状態に戻すトム。アルマはことあるごとにトムにマウントを取ろうとするが、いつも己の無力を知るばかり。何でもできるトムが腹立たしい。それはトムをアンドロイドと見下しているから。一方、そういう対応にも対処法がプログラムされているトムは動じず、アルマをさらに怒らせる悪循環。彼らのやり取りは、もはやアンドロイドは人間より成熟していると思わせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

アルマのトムに対する振舞いは、ある意味彼を実験し評価するという当初の目的にはかなってはいる。だが、人間のように自分を決して傷つけたりしないトムに少しずつ人格のようなものを感じ始めたアルマは、ついに彼とセックスする。もう生身の人間は必要ない。こうやって人類は人口を減らし、やがて絶滅する暗い未来を予感させる作品だった。

監督     マリア・シュラーダー
出演     ダン・スティーブンス/マレン・エッゲルト/サンドラ・フラー/ハンス・レーブ
ナンバー     14
オススメ度     ★★*


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