こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コーダ あいのうた

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家族のことは大好きでずっと一緒いたい。でも、将来への夢ができた今は、その深い絆が重荷になっている。物語は、両親と兄が聾者、一家でひとりだけ健聴者の少女が歌の才能を見出され進路に悩む姿を描く。一緒に漁船に乗ったときはいつも朗々と歌っているのに、誰も気づいてくれない。子供の時に話し方を笑われてからは人前に出るのが恥ずかしい。それでも、熱心な音楽教師のおかげで少しずつ自信が湧いてくる。手話の卑語を通訳させる父、己の都合を押し付ける母、悪態をつく兄。みな、常識や思いやりに欠けるところがある。彼らだけではきちんと生活できない。一方で誰よりも愛してくれている。そんな家族は彼女にとって足かせであると同時にシェルターでもある。障害者と家族の関係は自由に生きる難しさを訴える。

合唱を選択科目に選んだルビーはV先生に素質を認められ、マイルズと共にデュエットのパートを任される。だが、家業の手伝いで毎回レッスンに遅れるルビーはV先生からやる気を問われる。

行政への不満から協同組合を立ち上げた両親は、手話通訳者としてルビーを必要としている。せっかく熱中できることを見つけたのに、認めてくれない両親に対して不満は募っていく。音大に進学したいけれど家族を見捨てられない。子離れできない家族と親離れできないルビー、このあたり両親と兄が読唇術や発声法をきちんと身に着けていれば誰も犠牲にすることはなかったはずなのに、アドバイスする人はいなかったのだろうか? 障害者が自立できるようきちんと教育を受けさせるのが行政の仕事、担当違いとはいえ漁師たちの権利を奪おうとする役人の傲慢さに腹立たしさを覚えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

発表会で課題曲を熱唱するルビー。彼女の歌が聞こえなくても周囲の反応でその素晴らしさを知る父。ミュートされた映像が聾者の感覚を雄弁に再現していた。そして彼らに歌の意味が分かるように工夫するルビーの機転。理解し合うには少し工夫が必要だが、前に進むには変わらなければならないとこの作品は教えてくれる。

監督     シアン・ヘダー
出演     エミリア・ジョーンズ/トロイ・コッツァー/マーリー・マトリン/ダニエル・デュラント/フェルディア・ウォルシュ=ピーロ/エウヘニオ・デルベス/エイミー・フォーサイス
ナンバー     15
オススメ度     ★★*


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