こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワン・セカンド 永遠の24フレーム 

f:id:otello:20220318120027j:plain

一瞬だけ映ったと知らされたわが娘をどうしても見たい。もう何年も会っていないけれど絶対に見間違えないはず。男はその一念を胸に砂漠を渡り未舗装の道をひたすら歩く。物語は、文革期の中国、労働改造所から逃亡した男が、巡回上映されるニュース映画見るために奔走する姿を描く。バイクで運ばれるフィルムは当時とてつもない貴重品。だが、それを盗む子供がいる。フィルムを奪い合ううちに、男はその子供には親がいないと気付く。娘への思いで胸がいっぱいの男と、親の愛を知らない子供。少しずつお互いの境遇を理解し合い、心を許していく過程が感情を刺激する。荒涼とした自然。石とレンガでできた乾いた街。ディテール豊かに再現された、まだ映画が娯楽の王様だった時代。朝から上映を心待ちにしている住人たちの熱気がスクリーンから沸き立つようだった。

浮浪児が盗んだフィルム缶を映写技師のファンに返した男は、泥に汚れたニュースフィルムの修復を手伝う。浮浪児がリウという女の子だとわかると、男は彼女とその弟が気になり始める。

ファンは街の名士として扱われ、自分の息子がフィルムの管理を怠ったのに責任をうやむやにする。村人は異議を唱えず、ファンの言うとおりに老若男女総出でフィルム洗浄にあたる。後半にもファンは小市民的な行為に走るが、一方で息子を愛し仕事に誇りを持つ良識人でもあり、男の目的を理解し手伝う人情も持ち合わせている。本音と建て前、良心と保身、親切さと小狡さといった、基本的には善人なのだが少し裏もあるファンのキャラクターが、この作品に奥行きを持たせていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

とりあえず修復は完了し、ニュースフィルムは本編の後に上映される。カメラは1秒ほど穀物袋を担いだ少女をとらえる。もう何年も会っていない。写真もない。それでも少女が自分の娘であると確信している。どんなにつらく理不尽な境遇に置かれても希望があれば人間は強くなれると、厳しい表情の中で涙をこぼす男の瞳が訴えていた。リウが超絶美少女なのには驚いた。

監督     チャン・イーモウ
出演     チャン・イー/リウ・ハオツン/ファン・ウェイ
ナンバー     46
オススメ度     ★★★★


↓公式サイト↓
https://onesecond-movie.com/