こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウェディング・ハイ

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どうでもいいことを山ほど決めなければならない。適当な相槌はすぐに見抜かれてしまう。そう思って必死に演技をする彼。人生最大のイベントだから納得いくまで細部を詰めたいのに、なかなか決まらない。なぜもっと協力してくれないのかと言葉の端々ににじませる彼女。物語は、一組のカップルと彼らの結婚式を担当するプランナーの奮闘を描く。できればできるだけ地味にやりたい新郎と、この日だけはヒロインになりたい新婦。その意気込みの温度差がくっきりする打ち合わせシーンが共感を呼ぶ。そして、挙式当日にも想定外の出来事が頻発、絶対にノーと言わない敏腕プランナーは、出席者全員が納得するように知恵を絞る。謝罪とお願いの連続、頭を下げつつも強引に説得。冷や汗をかきながらも奔走するプランナーの姿には、サービス業の神髄が詰まっていた。

真帆がウェディングプランナーを担当する彰人と遥の結婚式。双方の主賓のスピーチが長引いたせいでタイムスケジュールが狂ってしまい、進行を大幅に変更しなければならない事態に陥る。

新郎新婦だけでなく、主な招待客それぞれがこの式にかける思いを吐露する。彼らもまた、普段の生活では雑事に埋もれて不本意に過ごしている。特に彰人の上司はここでの祝辞に起死回生の決意で臨み地に落ちた評判を回復しようとする。彼の苦労が延々と再現されるのだが、職場にも家庭にも居場所を失ったオッサンの悲哀がコミカルに再現されていた。同時に、花嫁を奪取しようと目論む元カレや建物に潜り込んだ怪しげな男も、結婚式場にまつわるいかにもありそうなエピソードで、適度なデフォルメはされていても奇妙なリアリティがあった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

とりあえず真帆とスタッフの努力で式は無事終わる。披露宴とは、手品やマグロ解体、太鼓やダンスといった、素人が自分なりに磨いてきて、誰かに見てもらいたい芸を披露する場でもあることを教えてくれる。キャバクラや仲間内の宴会での一発芸とはレベルの違う、招待客を満足させるレベルでなければいけないのだ。

監督     大九明子
出演     篠原涼子/中村倫也/関水渚/岩田剛典/中尾明慶/浅利陽介/前野朋哉/六角精児/尾美としのり/臼田あさ美/向井理/高橋克実
ナンバー     50
オススメ度     ★★★


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