こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンビュランス

善人として生きようとした男は、犯罪者として生きる男の誘いを断り切れない。少年時代から培った血よりも濃い義兄弟の絆、友情以上の信頼で結ばれている。物語は、妻の治療費のために銀行強盗を手伝う羽目になった男の苦悩を描く。優しさゆえに嘘をついてしまった。カネを作らなければ妻の命は尽きる。悪党に加わらざるを得ない状況に追い込まれた男は、仕方なく逃走車のハンドルを握る。簡単な仕事のはずだった。だが情報は筒抜けになっていた。さらに想定外の事態になり、生き残るにはアクセルを踏み続けるしかない。圧倒的なトルクと強度の救急車がパトカーを振り切ってハイウェイを爆走し、ヘリをかわして市街地を激走するシーンの連続は、流麗なカメラワークと短いショットでそのパワフルな動力性能を再現する。

義兄弟のダニーに借金を申し込んだウィルは、そのまま強盗団の一味に加わる。計画は完璧だったが、闖入してきた警官をウィルが撃ち、警官を搬送する救急車を乗っ取る。

銀行はすでに狙撃隊に包囲されている。なんとか突破口を見つけるが、すぐに十数台のパトカーに追われる。警官を死なせたくないウィルとダニーは救命士に治療を命じ、一方で警察も仲間を死なせたくないので救急車には手出しできない。微妙な距離を保ったまま繰り広げられる追跡劇、パトカーばかりが障害物に激突し、バランスを崩して横転する。車体が重い救急車に細かい動きが無理なのはわかるが、派手ではあるがあまりにも大味なカーチェイスの連続には思わずあくびが出た。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ダニーはヒスパニック系ギャングに助力を乞い、偽装した救急車で彼らのアジトに逃げ込む。このあたりまでは大量破壊はしてもなるべく死人を出さない気遣いが見られたが、ヒスパニックと警官の命は安いのか、ここからは安易な大量殺戮が始まる。拳銃小銃狙撃銃のほかに戦場で使うような大型の機関銃まで登場し、死体の山が築かれるのだ。いくらウィルの良心を強調しようとも、暴力に満ちた映像からは空しさしか得られなかった。

監督     マイケル・ベイ
出演     ジェイク・ギレンホール/ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世/エイザ・ゴンザレス/ギャレット・ディラハント
ナンバー     57
オススメ度     ★★


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