突然宇宙空間から現れたかと思うと、インフラを破壊する巨大モンスターを軽く一蹴する銀色の巨人。高度な知性を持っているだけでなく、地球の科学力では到底及ばないエネルギーを自在に操ることができる。物語は、人類を駆逐しようとする外星人と人類の味方をする外星人の戦いを描く。悪意を持った外星人は言葉巧みに人類を支配下に置こうとする。交渉の矢面に立たされた日本政府は彼らを利用しようとするが、逆に侵略の橋頭保にされるだけ。“異なる文明が出会ったとき劣る方は殺されるか奴隷にされる”、世界史上の悲劇が繰り返されようとする。天文学的な距離を克服できる文明の前では地球人は無力であるとこの作品は訴える。人間に姿を変えた外星人同士が飲み会を割り勘にしたのには、思わず笑ってしまった。
日本各地に現れた禍威獣対策に当たる禍特対の神永は、ウルトラマンの風圧に吹き飛ばされた後に一体化する。その後友好目的で地球に来たと言うザラブ星人は首相と不平等条約を結び、神永を狙う。
ウルトラマンのみならずネロンガやガボラといった禍威獣の造形は当然テレビシリーズより洗練されているが、映像は当時の質感が保持されている。音楽もそのまま転用され各シーンにマッチしたBGMが使用されている。人間ドラマの部分はもちろん現代風にアレンジされているが、ウルトラマン登場場面ではテレビシリーズのテイストが細部にわたって忠実に再現され、懐かしさがこみあげてくる。特に女子隊員が巨大化してオフィス街を歩く姿は元ネタを凌駕する出来栄え。オチを知っていてもなお楽しめる作りこみの奥深さに深い感銘を覚えた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
さらにメフィラス星人やゼットンといったおなじみのキャラが登場し、人類を守ろうとするウルトラマンと戦いを繰り広げる。神永との一体化が明かされたのには違和感を覚えたが、普通に考えればバレバレなので変更はやむを得ないだろう。なにより、ゾフィーがウルトラ兄弟の長兄などと改悪されず、オリジナルの設定を守っていたのがうれしかった。
監督 樋口真嗣
出演 斎藤工/長澤まさみ/有岡大貴/早見あかり/田中哲司/西島秀俊/山本耕史/嶋田久作/津田健次郎
ナンバー 86
オススメ度 ★★★★
↓公式サイト↓
https://shin-ultraman.jp/