こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

トップガン マーヴェリック

狭いコックピットで操縦桿を握るパイロットの背景が空に浮かぶ雲から一転して荒涼とした大地に変わる。通常体勢から背面飛行に切り替わるその素早さに戦闘機の機動性が凝縮され、平衡感覚がおかしくなりそう。度胸もテクニックも不器用な生き方もほとんど変っていない主人公に思わず懐かしさを覚えた。物語は、伝説のパイロットが教官として親子ほど年の離れた後輩を指導・指揮する姿を描く。コストがかかり人命も危険にさらす戦闘爆撃機はその役目をドローンに奪われようとしている。もはや20世紀の遺物のような存在だが、有力な後ろ盾のおかげで、限界に挑戦し続ける彼を誰も止めることはできない。組織での出世競争には敗れても他者の追随を許さない技能を持っていれば、活躍のチャンスは必ず来るとこの作品は訴える。

核施設爆破部隊の訓練を任されたマーヴェリックは、集められたパイロットの中に、かつて死なせた相棒の息子・ルースターの存在を知る。ルースターはことあるごとにマーヴェリックに突っかかる。

我こそは最優秀と自信満々の若者たちはマーヴェリックに対してもそれほど敬意を示さない。ところが戦闘訓練でマーヴェリックの圧倒的な腕前を見せられて、ひとりまたひとりと罰ゲームを課されていく。うぬぼれた若造がプライドをへし折られていく過程は痛快だが、マーヴェリックもまたかつて鼻持ちならない “オレ様” 的存在だった。そのあたり、エリート候補生のメンタルは時代が変わっても大きな差はない。傲慢な訓練性が負けることで謙虚さを学んでいく。彼らの成長に寄り添うマーヴェリックもまた少しだけ大人になっていたのには時の流れを感じた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

4機編成の攻撃隊リーダーとなったマーヴェリックは、先陣を切って敵地に乗り込む。脱出時には気を失うほどの重力にさらされる上に反撃も食らう。そして、人は若い方がいい、機体は新しい方が強いという常識に抗い、マーヴェリックは己の信念を貫く。それは、ハリウッドのトップを走り続けるトム・クルーズの矜持のようにも思えた。

監督     ジョセフ・コジンスキー
出演     トム・クルーズ/マイルズ・テラー/ジェニファー・コネリー/ジョン・ハム/グレン・パウエル/ルイス・プルマン/チャールズ・パーネル/モニカ・バルバロ/エド・ハリス/バル・キルマー
ナンバー     96
オススメ度     ★★★*


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