こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビリーバーズ

オッサンと若い男女、3人はそれぞれ股を60度に広げ足の裏を合わせて正三角形を作っている。念動を相手に伝え、お互いを夢の中で見ることで意識を共有できるようになると信じている。物語は、カルト集団に洗脳された信者が小さな無人島で修行を送るうちに破滅に向かう姿を描く。食料や水の供給は滞りがち、仕方なく海産物で飢えをしのいでいる。セックスは厳格に否定され、みだらな夢を見た者はそれが心の弱さと批判され罰せられる。対等に見えた関係はいつしか命令する者と従う者に立場が分かれている。そして、行動規範となるはずの教祖の言葉が、行き当たりばったりの解釈で都合よく運用されていく。思考停止に陥った男女が抑えきれない性欲を通じて少しずつ自我に目覚めていく過程は、叶わない理想よりも目の前の現実を生きるべきと訴える。

議長、副議長、オペレーターの3人は完全な人間を目指して規則正しい生活を送っている。ある日、島に5人の若者が上陸、3人は暴力にさらされる。その日から3人の日常は一変する。

オペレーターは過去に修行で失敗した経験があるらしく、どこか暗い影を引きずりながらも自分のステージを高めようとしている。議長は前向きだが自分勝手な男で支配欲が強い。唯一の女である副議長は豊満な肉体を持て余し、2人の男に劣情を抱かせている。ただ、信仰心が彼らを抑制しているだけ。暴力によってその均衡が破られても、彼らはすぐには性行為には及ばず、非常に回りくどい手順を踏む。全裸の副議長を前にして、建前上は性欲を悪とみなすオペレーターと議長の、言い訳じみた射精の理由が滑稽だ。そんな、洗脳状態の人間の思考回路がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

副議長とオペレーターは深い仲になるが、議長も勃起したペニスを副議長に処理させたりする。性的行為を教団内の序列に物を言わせて強要する議長に対し、嫌々ながらも信仰の証とばかりに受け入れる副議長。硬直した思考しかできない集団ほどセクハラが起こりやすいとこの作品は教えてくれる。

監督     城定秀夫
出演     磯村勇斗/北村優衣/宇野祥平/毎熊克哉/山本直樹
ナンバー     126
オススメ度     ★★★


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