こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

あなたがここにいてほしい

出会った瞬間に恋に落ちた。その日から、離れ離れに暮らしていても輝くような彼女の笑顔を思い出さない日はなかった。物語は、高校時代に知り合った男女の10年間に及ぶ愛を描く。卒業後、少女は難関大学に合格した。少年は建設現場で働いている。まったく住む世界が違っても、お互いを思う気持ちに変わりはない。それでも、出稼ぎもいとわず日銭を稼ぐ彼と大学で己の可能性を広げていく彼女の間には、少しずつ隙間ができ始める。やがて彼女の前に現れた、起業して成功した幼馴染。初恋の相手とつつましく生きるか、リッチになった幼馴染の奥様になるか。豊かな生活を送るべきだと理性は判断しても、心は拒否する。彼女の母が入院の順番待ち中に幼馴染が病室を手配すると、陰で無力感に打ちひしがれたふたりが声をなくす。そのシーンが現代中国の格差を象徴していた。

ラブレター事件がきっかけで進路が分かれたチンヤンとイーヤオだったが、チンヤンが貯めたカネでアパートを借り、同棲を始める。だが、チンヤンは多忙でなかなかアパートに帰れない。

“好き” だけで突き進めた時間は過ぎ、イーヤオは将来を考え始める。大学院に進学し、より高収入を得られる仕事に就くことも頭によぎる。チンヤンも懸命に働き現場監督を任されるまでになるが、不正を見過ごせず雇い主と対立して仕事を失う。また、イーヤオの母は労働者階級のチンヤンを露骨に嫌う。「稼いだ金額がその人の価値」という発想、そこには1世代上の大人たちが堕ちた「競争のダークサイド」への批判がシニカルに込められていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

大きな負債を抱えたチンヤンはケータイも通じない僻地に単身赴任し、イーヤオに別れを告げる。なのに、チンヤンもイーヤオもどこか煮え切らず、運命が加速するきっかけを探している。学歴差はそのまま階級差、そして一度終わった恋はもう元には戻らない。遅れて届いたメールと残された手帳、イーヤンを思うがゆえの矛盾した思いが堂々巡りするチンヤンの胸中が、切ない共感を呼んだ。

監督     シャー・モー
出演     チュー・チューシアオ/チャン・ジンイー
ナンバー     136
オススメ度     ★★*


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