こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー

コスチュームを身にまとったら最強になるはずだった。だが実際は映画のようにうまくいくはずもなく、ただ運が味方しただけ。物語は、ヒーロー映画の主役に抜擢された売れない俳優が記憶喪失となり、映画の設定を現実と信じ込んだことから起きる騒動を追う。何をやってもうまくいかず仕事はコンドームのCMだけ。つるんでいる仲間は間抜けばかりで、しっかり者の妹しか頼れる人はいない。それでもやっと巡ってきた主役、ハリウッド超大作のちゃちなパロディとわかっていても熱が入る。肉体を鍛え上げ鋼のような筋肉を身に着けたとき、本物の強盗を相手にしてもひるまない勇気と体力がみなぎってくる。小道具やスタジオのセットをいかに本物らしく見せるか、名もない映画屋たちが見せる職人気質が楽しかった。

謎のヒーロー・バッドマンを演じることになったセドリックだったが、撮影中に父入院の知らせを受けて、映画用のクルマで病院に向かう。道中事故にあい頭を強打、名前すら思い出せなくなる。

ヒッチハイクで撮影場所の城に向かうが、連続強盗事件のとのかかわりを疑われる。ところが、まさにその強盗中に出くわし、首尾よく強盗からカネを奪ったうえ逃走するセドリック。一方、彼の状況を知った妹たちも彼を追う。さらに警察の捜査員であるセドリックの父も彼の痕跡をたどっている。その間、今時珍しいベタで下品な一発芸がこれでもかとばかりに披露されるが、「スパイダーマン」をもじったシーンは椅子からずり落ちそうになった。彼女がむしろうれしそうなのが印象的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後撮影所に戻ったセドリックは追いかけてきた強盗のボスとの一騎打ちになる。拳銃を持つ相手に対し、セドリックの武器はバッドマンの小道具。大岩を投げつけられたり、地面の深い穴に突き落とされたり、レンガの壁をぶち破ったりと、派手な格闘アクションを見せる。それらさまざまなギミックがいかにも非現実的な状況を視覚化する映画というアートの懐の深さを感じさせる。父への気配りにも感心した。

監督     フィリップ・ラショー
出演     フィリップ・ラショー/ジュリアン・アルッティ/タレク・ブダリ/エロディ・フォンタン/ジャン=ユーグ・アングラード/アムール・ワケド
ナンバー     143
オススメ度     ★★*


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https://badman-hero.com/