こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カムバック・トゥ・ハリウッド!!

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奇跡を信じて映画を作り続けてきたのに、神は一瞥もくれない。会いに来るのはヤバい筋の借金取りだけ、返せなければ命を取られる。物語は、撮影中に起きた死亡事故をヒントに新作をでっちあげ、詐欺を企む映画プロデューサーの苦闘を追う。主演俳優が死んで企画がポシャれば多額の保険金が支払われる。借金を帳消しにするだけでなく、莫大な儲けにつながると借金取りも乗り気になっている。プロデューサーが白羽の矢を立てたのは自殺願望が強い元西部劇スター。さっそくボツ山の中から脚本を掘り出し、監督選びを始める。主役を演じたロバート・デ・ニーロのテンションが異常に高く、人の命を何とも思わない悪趣味な設定をはしゃぎながら演じているあたりがなんとも不愉快だ。風刺が効いていないブラックコメディは1ミリも笑えなかった。

新作の酷評で資金難に陥ったマックスは、老人ホームにいるデュークを説得、次回作の撮影に入る。若い女性を監督に抜擢した意欲作を装い、田舎街に撮影隊を送り込む。

早々と撮影を打ち切りにしたいマックスは、デュークが落命するようにさまざまな仕掛けを施す。ところが、俳優魂を復活させたデュークは心身ともに充実、監督の期待以上の演技を見せる。このあたり、マックスの悪意がすべて裏目に出て結果的に素晴らしいシーンが出来上がるという皮肉は、本来ワクワクする体験のはず。だが、すべてが使い古された伏線とオチで全く意外性も新鮮味もない。言葉を理解する馬の後足で蹴られたマックスが吹っ飛んでいくショットなど、1970年代の雰囲気を出すためなのかわざと安っぽく仕上げている。スベりすぎてリアクションに困るコントを見せられているようだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

人を殺すために映画を製作するというアイデアがいつの間にか映画愛に変わっていく。その過程はいくらでも面白くできたはず。CGも特撮もなかった時代の “手作り感” は出ていたものの、レジェンドクラスの俳優3人を使っても一向に話は盛り上がらない。どうせなら “KILLER NUNS” をもっと見たかった。

監督  ジョージ・ギャロ
出演  ロバート・デ・ニーロ/トミー・リー・ジョーンズ/モーガン・フリーマン/ザック・ブラフ
ナンバー  99
オススメ度  ★★


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