こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

HiGH&LOW THE WORST X

拳と拳の勝負、鉄パイプや金属バットを使う奴は計算に入れない。ただ、だれが一番強いかを決めたいだけ。自分が一番強いと周囲に認めさせたいだけ。物語は、資金力にモノを言わせて近隣他校を恐怖支配する新興勢力と地区随一の不良校の激闘を描く。ひとりでは集団に勝てない。命令するだけでは子分は動かない。仲間と信用しリーダーとして信頼されなければ、ひとつの高校をまとめるのも不可能。それぞれは緩い友情で結ばれているが、いざ外敵が現れると全員が結束して乱闘に加わる。そんな、主人公が通う高校の生徒たちの熱い思いがスクリーンからほとばしっていた。何度も繰り返される乱闘シーンは、基本的にはパンチとキックの応酬、ダンスで鍛え上げた俳優たちの流麗なアクションはある種の様式美すら感じさせる。

瀬ノ門工業の天下井と腹心の須崎は、三校連合を束ねて鬼邪高の縄張りを狙う。鬼邪高の楓士雄は鳳仙高や鈴蘭高に連絡を取るが、三校連合が先制攻撃を仕掛けてくる。

周囲の者をすべて見下す天下井は他人に常に厳しく接する。幼馴染だった須崎でさえ今や顎でこき使われている。喧嘩の腕では須崎のほうが上なのに、天下井の子分にならざるを得ない事情が悲しい。他の連合校も天下井の資金力に屈しただけで、天下井に忠誠を誓っているわけではない。一方で鳳仙や鈴蘭はそれぞれ事情がありながらも自発的に鬼邪高に協力してくる。このあたり、強権国家vs民主国家という21世紀の世界情勢が反映されていて興味深かった。なにより、鈴蘭のラオウに喧嘩を売るのではなく、友達になろうという楓士雄の屈託のなさが、ご都合主義すぎとはいえ爽やかだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

喧嘩上等、でも精根尽き果てるまで殴り合った後は固い友情で結ばれ永遠の仲間になる。などという20世紀の少年マンガ雑誌のような世界観がいまだアップデートされることなく受け継がれていることに驚くとともに、男は強くあらねばならないという絶対的な価値観がかえって心地よかった。このシリーズには、女の出番はなくていい。

監督     二宮“NINO”大輔
出演     川村壱馬/吉野北人/神尾楓珠/福山康平/前田公輝/中本悠太/三山凌輝/永沼伊久也/志尊淳/坂口涼太郎/三上ヘンリー大智
ナンバー     171
オススメ度     ★★★


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