死体になっていたのは、死刑になってもおかしくないような人殺し。司法では罰せられず、のうのうと自由を謳歌していたのに急死する。物語は、この男の死因に疑問を持った物理学者が真実を暴いていく過程を描く。逮捕され、証拠も十分にそろっているのに、完全に黙秘したことから無罪を勝ち取った容疑者。少女殺しの変質者だが、頭は抜群に切れ意思も強い。自分が起こしたとされる殺人事件被害者の遺族の前に堂々と現れ、逆に脅しをかけたりする。彼の死をいちばん喜んでいるはずの者にはアリバイがある。だからこそ死因が余計に疑わしい。主人公の化学的知識と、刑事たちの気持ちにまったく忖度しないのに犯罪者にならざるを得なかった人々の気持ちを理解するギャップはこの作品でも健在、計算されたトリックを暴いていく過程はスリリングかつコミカルだった。
歌手志望の佐織を殺した容疑で逮捕された蓮沼が夏祭りのパレード中に自然死を偽装して殺される。湯川はすぐにその手口を見抜くが、佐織の両親はその時間、客の対応をしていた。
湯川の推理に従って刑事たちが捜査すると、すぐに犯行を疑われる人物が複数浮かび上がる。ところがあっさりと自供し蓮沼殺しは解決してしまう。あまりの単純さに、湯川はまだ明らかになっていない過去があると直感、刑事たちに疑義を唱える。このあたり、犯行グループは監視カメラに映っていることぐらい計算に入れておくべきだし、なにより蓮沼に対する復讐ならば蓮沼以上の覚悟で沈黙を守ってほしかった。その弱さが人間らしいとはいえるが、殺人に加担しているにしては決意が甘すぎはしないか。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
湯川はさらに佐織殺害事件に対しても、警察がまったく思いつかなかった道筋を提議、果たして彼の考えた通りになっていく。ただ、そこに至るまでが偶然に頼る部分が多く、こじつけも見られる。そもそも転んで鉄パイプに頭をぶつけたくらいではせいぜい失神するだけで、死んだと勘違いして自殺を図るのは不自然。映像には手間暇かかっている分、残念だった。
監督 西谷弘
出演 福山雅治/柴咲コウ/北村一輝/飯尾和樹/戸田菜穂/田口浩正/岡山天音/川床明日香/村上淳/吉田羊/檀れい/椎名桔平
ナンバー 176
オススメ度 ★★
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