こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グッバイ・クルエル・ワールド

覆面の強盗団が集金所を強襲する。非合法なカネゆえ警察は動かない。だが、独自のネットワークを持つヤクザたちが少しずつ彼らを追い詰めていく。物語は、プロ犯罪者と素人の寄せ集め男女が分け前をめぐって起こした内紛の顛末を描く。派手なアメ車で現場に乗り付けてチンピラを縛り札束を持ち去るプロローグ、その手際の良さはスタイリッシュなクライムサスペンスを思い出させる。ところが、目先の利益に目がくらんで尻尾を出す者がいる。うまく立ち回っているつもりが誰かに利用されている。結局、信頼できる仲間はいない。さらに一匹狼の汚職刑事がヤクザの手先になって情報を集めている。もはや逃げ道はないと悟った若い男女が運命を呪うかのように銃をぶっ放しカタルシスに浸っていく過程は、格差社会への怒りに満ちていた。

運転手と4人組強盗団は8千万ほどの現金を奪うが、従犯の美流と運転手が主犯格の萩原に再分配を要求する。萩原は2人に宝石泥棒を手伝わせた上、彼らを始末しようとする。

被害を受けたヤクザは蜂谷という刑事に強盗団の足跡を追わせると同時に内通者をあぶりだす。内通者はすぐに見つかり、生き残った美流とともに残りの強盗団を殺せと命じられる。ヤクザはカネの回収よりも強盗団への見せしめを優先させ、あくまでメンツを保とうとする。一方で、強盗団の頭脳・安西は、人生をやり直すために真面目に働くが、元ヤクザとは思えない脇の甘さ。彼と気の合う浜田は権力を憎んでいる。ヤクザと極左、どちらも腹が据わっていて危機的状況でも冷静でいられるが、世界を変えるためには犯罪もいとわない信念という点では左翼の浜田のほうが強靭に見えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、多彩なキャラが入り乱れそれぞれにエピソードを展開させるために話が拡散し、人物像の掘り下げが浅いのが難点。蜂谷によるマンハントをテーマにしていれば、ひねりのない単調な銃撃戦シーンは避けられたはずだ。美流の煙草とガソリンの関係や蜂谷の移動距離も不自然。終盤のディテールをもっと練るべきだった。

監督     大森立嗣
出演     西島秀俊/斎藤工/宮沢氷魚/玉城ティナ/宮川大輔/大森南朋/三浦友和/奥田瑛二/鶴見辰吾
ナンバー     174
オススメ度     ★★*


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