こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヘルドッグス

殴る蹴る投げる絞める。体格でもパワーでも大きく勝る中国人に、圧倒的なスピードとテクニックで対処する男。その首をへし折ってとどめを刺す。物語は、ヤクザ組織トップのボディガードになった潜入捜査官の葛藤を追う。日々トレーニングを怠らず命令されれば容赦なくターゲットを始末する一方で、過去の失敗に対し強い贖罪意識に苛まれている。組織対組織の駆け引きと裏切り、組織内での競争と嫉妬、そして最高のバディをだまし続ける苦悩も抱えている。ひとつ間違えれば、その先にあるのは凄惨な死、常に最悪の事態に備えて準備しなければならない。主人公を演じた岡田准一の抜群の運動神経が躍動感あふれる映像からほとばしっていた。村上春樹の「1Q84」に出てきた暗殺方法が披露されるが、本当に一撃で音もなく相手を殺せそうだ。

汚れ仕事専門の兼高と室岡は、十朱の護衛を任される。十朱は若いが頭も切れ、関西ヤクザの内紛に乗じて勢力拡大を企むが、交渉の席で暗殺者に命を狙われる。

関西ヤクザ側の陰謀を知った十朱は防戦体制を固め、兼高と室岡も武器を手に襲撃部隊に応戦する。拳銃小銃入り乱れる派手な銃撃戦。その際戦死した十朱の秘書の葬儀は手が込んでいて非常にユニークだった。秘密の地下礼拝堂のような場所で参列したヤクザたちがヴェルディのオペラ曲を合唱したり、ジョジョ(仗助)頭和服の未亡人が挨拶したり。特に坊さんを斎場に招くための偽装には笑ってしまった。表立って葬儀も上げられない現代のヤクザは、こんな見送られ方をするのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、登場人物のセリフが聞き取りづらく何を言っているのか意味不明。おかげでヤクザ組織全体の人間関係がよくわからない上、彼らが具体的に何をしようとしているかも想像するしかない。アニメのように全部セリフで説明しなくてもよいが、モヤモヤ感ばかりが募っていく。短いショットの連続は言葉よりも画の力や構成で見せるという監督の思想が伝わってくるが、何度か朗読された詩くらいはきちんと理解したかった。

監督     原田眞人
出演     岡田准一/坂口健太郎/松岡茉優/MIYAVI/北村一輝/大竹しのぶ/金田哲/木竜麻生/酒向芳/赤間麻里子
ナンバー     178
オススメ度     ★★*


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