こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダウントン・アビー 新たなる時代へ

屋根を修繕する費用が工面できず、雨の日はたらいを屋根裏に並べている。大邸宅と大家族、何より貴族としての生活水準を維持するためには莫大な費用がかかる。先祖から受け継いだ財産を売り渡したくはない。使用人たちを解雇するわけにもいかない。そんな時に舞い込んだ意外な幸運。物語は、英国貴族の一族が直面した異文化との衝突を描く。屋敷に乗り込んできた銀幕のスターは、品格はなくとも女王のように振舞う。地中海では60年以上も前に燃え上がった恋が蒸し返される。異なった価値観をもつ同じ言葉をしゃべる人々と、価値観は共有できても気候風土が違う国の人々との出会いは、一族に新しい風と吹き込んでいく。歴史と格式、そして伝統を守るためには変わり続けなければならないと彼らの判断と行動は訴える。

屋敷を映画のロケ地として貸し出すことにしたメアリーはハリウッドからの撮影隊を受け入れる。英国出身の監督はマナーを心得ているが、主演女優のマーナは英国人を見下した態度をとる。

時代はトーキーへの過渡期、マーナは発声が悪いため同時録音には向いていない。自信を無くし不機嫌になっていくマーナを、彼女のファンだという使用人がなだめようとする。庶民の生まれでもセレブに成り上がれる米国と身分がほぼ固定された英国。チャレンジ精神を重んじる新しい国との、自由と民主主義の差が印象的だった。音声を別録して映像と合成できる技術があるのなら、最初からすべてアフレコにすれば解決したはずだが、そのあたりの発想は当時なかったのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方、南仏侯爵のヴィラ相続で現地を訪れたロバートに対し、侯爵の母は、自分たちの財産を横取りされる不機嫌を隠さない。英国貴族ならばもっと遠回しに皮肉の効いた言葉を選ぶだろう。本心をなかなか明かさない英国人に対し、フランス人や米国人は己の感情をはっきりと相手に伝える。どちらがいいと比較するのはナンセンスだが、異文化と接するときはストレートでいいと思う。特にグローバル化の進んだ現代では。。。

監督     サイモン・カーティス
出演     ヒュー・ボネビル/ローラ・カーマイケル/ジム・カーター/ジム・カーター/ミシェル・ドッカリー/マギー・スミス/ヒュー・ダンシー/ローラ・ハドック/ナタリー・バイ/ドミニク・ウェスト
ナンバー     147
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://downton-abbey-movie.jp/