こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・メニュー

食べるのではなく味わう。コックたちが丹精込めて作った料理にはストーリーがあり、味覚のみならず五感すべてを動員して初めておいしいと感じるのだ。物語は、孤島にある予約困難なレストランに集った客と天才シェフの緊張感あふれる駆け引きを描く。食材は島とその周辺で採れた新鮮なものだけ。前菜からすでに優れた哲学を内包したフルコースのメニューは、すべてシェフの緻密な計算のもとタイミングと量が決められている。客席に開かれたキッチンではシェフを崇めるコックたちが統制の取れた動きをしている。そしてシェフによるこれ見よがしの講釈。客たちは至高の料理を口にする幸福に浸るのかと思いきや、まったくリラックスできない。グルメの世界はよくわからないが、こんな環境ではいくら美味でも心は満たされないのでは。

タイラーはマーゴを有名シェフの店に誘うが、マーゴは別人の代役だった。それを知ったマーゴはへそを曲げ、タイラーやシェフの機嫌を損ねる言動ばかりする。

マーゴ以外の出席者はシェフの料理を楽しみにしている。素材の繊細な触感や色彩を生かしたアートのような逸品や意表を突く演出で、客たちは完全にシェフのペースに乗せられる。しかし、シェフの言葉が徐々に狂気をはらみ始めると不穏な空気が客席に充満する。そんな中、マーゴはまるでシェフの悪意を見抜いているかのようにふるまい、顰蹙を買うとさらに意地を張る。あくまで客に対して店のルールを守らせようとするシェフの尊大さは不愉快で、なんでカネを払って嫌な思いをするのかと怒るマーゴに共感してしまった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

副シェフが拳銃自殺したことから異常さは加速、ついにシェフがこの日の客の予約をどういう理由で取ったかが明らかになっていく。自らが求める究極のメニューにはどうしても人間が必要なのはわかる。彼らが応報を受けるのも当然。それでも、部下の絶対服従には釈然としなかった。結局、奇をてらった創作料理よりも大衆的なチーズバーガーを好むマーゴが一番まともだったということか。

監督     マーク・マイロッド
出演     レイフ・ファインズ/アニヤ・テイラー=ジョイ/ニコラス・ホルト/ホン・チャウ/ジャネット・マクティア/ジュディス・ライト/ジョン・レグイザモ
ナンバー     218
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://www.searchlightpictures.jp/movies/themenu