こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

夜、鳥たちが啼く

若いころに味わった成功がいまだ忘れられない。現実を直視する勇気が持てず自分の殻に引きこもっている。物語は、なかなか新作小説が書けない男が、仮住まいを提供した母子と交流するうちに平安を取り戻していく過程を描く。生活を支えてくれていた同棲恋人への嫉妬が抑えきれなかった。男の言動に耐えかねた恋人は信頼していた先輩と不倫してしまう。その結果先輩は離婚、代わりに先輩の妻と息子が男の元にやってくる。2組のカップルが、結果的にお互いのパートーなーを交換するという設定がなんとも生々しい。最初は親切だった。贖罪の気持ちも混ざっていた。他に居場所がない男と女が接近していくのはありふれた光景だ。それでも、傷ついたふたりが心を通わせる過程は、小さな喜びの積み重ねが人生を明るくすると教えてくれる。

母屋を裕子とアキラ母子に貸し、離れのプレハブで寝起きする慎一。昼間は派遣労働で夜に執筆しているが、なかなかアイデアは沸かず、深夜外出する裕子にも苛立ち始める。

裕子は男好きするのか、相手に不自由はしていない様子。寝たアキラをほったらかして、心と体の隙間を埋めている。慎一は裕子よりもむしろアキラと仲良くしようとするが、裕子はそれを好まない。生活の不安に押しつぶされそうなシングルマザーと孤独な独身男、お互いに相手を意識しながらも異性として見ないように気を配っている。そのあたりの、駆け引きとも言えない微妙なやり取りが繊細に再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、海水浴に行ったのがきっかけでわだかまりを解いた慎一と裕子は、アキラを仲立ちにして信頼を築き始める。慎一とアキラは良好な関係を保っている。一度セックスした後、しつこくキスしようとする慎一を「変な期待はしないから」と拒否する裕子。彼女の小さなプライドは、恋愛市場におけるシングルマザーの立ち位置を象徴していた。ただ、ストーリーの起伏が乏しく、劇的なエピソードを挿入するとか慎一の心理描写にフォーカスするとか、退屈させない工夫がほしかった。

監督     城定秀夫
出演     山田裕貴/松本まりか/森優理斗/中村ゆりか/カトウシンスケ/藤田朋子/宇野祥平
ナンバー     231
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
https://yorutori-movie.com/