こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドリーム・ホース

小耳には挟んだ話に直観が反応した。知識も経験もないが、資料を当たりネットで調べた。そして計画を実現するために資金を出してくれる仲間を集めた。そんなヒロインのバイタリティに圧倒される。物語は、田舎町の主婦が中心となった共同馬主会の葛藤と競走馬の奮闘を描く。生気のない夫の世話、スーパーの単純作業、年老いた両親の介護、パブで酔っぱらいにビールを提供。単調で気苦労ばかりが多い日常にうんざりしていた彼女が考えたアイデアは数年越しのプロジェクトとなって地元民を引っ張っていく。血統の良い繁殖牝馬を手に入れ、その子の代で花を咲かそうという、家畜を飼育してきた者に生まれる発想が新鮮だった。出走馬をケージに入れず、ゴムロープを切ってスタートするという競馬ルールが興味深い。

村人たちから出資を募り引退した牝馬を格安で買ったジャンは、種付けをする。母馬は出産後死ぬが、生まれてきた子馬にドリームアライアンスを名付け、調教師のもとに送り込む。

ジャンは即断即決タイプで、ネガティブ要因を深く考えずに何事もポジティブにとらえて行動に移す。夫は頼りにならず、信頼できるのは元馬主のハワードくらい。有名な調教師にアポなしでドリームアライアンスをテストさせるなど強引なところもある。ドリームアライアンスは草競馬でデビューすると好成績を残し、メジャーレースに招待される。その間、無気力だった夫がジャンを手伝ううちにみるみる元気になっていく。金儲けよりも胸の高鳴り。何歳になっても夢を追う生き方が、豊かな人生を送る秘訣だと彼の変化は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一躍有名になったドリームアライアンスは、貴族から買収の誘いを受けたりレースで大けがを負ったりと、栄光と挫折を経験する。そのたびに共同馬主たちの意見は割れ、ジャンは意思統一に苦労する。それでも議論を戦わせて反対意見を説得していくジャン。決して独善に陥らず、あくまで民主主義的手続きを踏んで意思決定をする過程が成熟した英国社会を象徴していた。

監督     ユーロス・リン
出演     トニ・コレット/ダミアン・ルイス/オーウェンティール/ジョアンナ・ペイジ/ニコラス・ファレル
ナンバー     5
オススメ度     ★★★


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