こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女

急発進、高速後退、方向転換、爆走、Uターン。迷路のような細い路地に入るとドリフト縦列駐車、無音走行、さらには車幅ギリギリの狭い小径を強引に突っ切って追っ手を振り切る。圧倒的なスピード、絶妙のハンドルさばきとアクセル・クラッチ操作、強烈な横Gを体感させる臨場感あふれるカーチェイスには思わず息をのむ。物語は、訳アリ “荷物” を確実に目的地まで送り届ける女ドライバーの死闘を描く。運ぶのは男の子、だが警察の組織力を背景にしたギャングが街中に設置された監視カメラと情報網を駆使して確実に網を狭めてくる。男の子を守らなければならない、それ以上にギャングたちの強欲と残酷が許せない。組織と闘いぬく覚悟を決めた彼女は、あらゆるカギをこじ開けて突破口を開いていく。不愛想だが芯は強く人情にも篤いヒロインをパク・ソダムがクールに演じる。

野球賭博の胴元父子の逃亡を助ける仕事を請け負ったウナは、合流地点で息子のソウォンをクルマに乗せる。ソウォンの父はギャングにリンチされ、現場に取り残される。

ギャングのボスは警察の捜査班長で、野球賭博を取り締まる名目でソウォンが持つ金庫のカギを狙っている。リュックいっぱいの札束を持つソウォンは機転を利かしてウナに取り入り、彼女と行動を共にする。地獄のような生活を経て脱北後は孤独な人生を送ってきたウナは、初めて弱い者に頼られ、他人のために危険を冒す勇気と得る。他人とのかかわりを最小限にしてきたウナがソウォンと信頼関係を結ぶ過程が、ハードアクションの連続の中でほっと一息つかせてくれる。チューンナップしたハイテク車ではなく、20世紀に市販された古いマニュアル車を乗りこなしている姿が最高にカッコいい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

孤立無援の中、ウナたちは社長が待つ釜山を目指して、クルマを盗みながら逃走を続ける。ギャングだけでなく、防諜組織もウナたちを追っている。そして仲間を巻き込んでの最終決戦。開錠から格闘技まで、細長いマイナスドライバーの多様な使い方がアイデアに満ちていた。

監督     パク・デミン
出演     パク・ソダム/ソン・セビョク/キム・ウィソン/チョン・ヒョンジュン/ヨン・ウジン/ヨム・ヘラン/ハン・ヒョンミン
ナンバー     13
オススメ度     ★★★


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https://perfectdriver-movie.com/