こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

追龍

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受けた恩義は必ず返す。たとえ我が身を危険にさらしても、男としては当然の行動。物語は1960年代香港、若くして固い友情に結ばれた男たちの熱い生き方を描く。面倒見の良さとケンカの強さで頭角を現したチンピラと昇進のために彼を利用するエリート警察官、留置場で出会った2人は意気投合し、英国官憲の横暴に耐えながら裏社会に秩序をもたらそうとする。だが彼らの競争相手もまたそれぞれに協調関係を築いている。やがてギャング同士の抗争と警察内部の暗闘が複雑に絡まり合ううちに、義理と仕事の板ばさみになった彼らは苦悩と葛藤に苛まれていく。汚職を排除するのではない、それを前提に治安を保とうとする。そんな時代背景がかえって植民地の混沌を象徴する。ドニー・イェンの若作りメークには目を見張った。

ギャング団の乱闘に参加したホウは逮捕・こう留中、英国人官憲・ヘンダーに暴行されているところをロックに救われる。その後、窮地のロックをホウが助け、2人はお互いを信用するようになる。

黒社会と警察、属する組織で順調に出世していく2人。ロックはホウの麻薬売買に目をつむり、見返りに多額のカネを隠し持っている。一方で、ロックのライバル・ガンはヘンダーとつるみ、ホウの縄張りを食い荒らそうとしている。男はみな自分たちが生き残るのに必死、そのためには手段は選ばない。警察は犯罪を積極的に取り締まらない、むしろ若いころのホウのようにやくざ者が地元のもめごとを解決している。りゅうとした身なりのロックも陰でホウたちを操っているばかりで市民生活には干渉しない。九龍といった無法地帯の存在が彼らのような関係を産んだのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、ホウがヘンダーに復讐しようとしたことからロックと対立する。子分を殺された仇を討とうするホウと英国人に逆らうなと諫めるロック。それでも最後には利害を無視して信義を選ぶ。何よりも大切なのは信頼と名誉、友のために命懸けで戦うのが己の道と決めた男たちの思いは、善悪の彼我を越えて美しかった。

監督  バリー・ウォン/ジェイソン・クワン
出演  ドニー・イェン/アンディ・ラウ/フィリップ・キョン/ケント・チェン/ユー・カン/フェリックス・ウォン
ナンバー  73
オススメ度  ★★★*


↓予告↓
https://www.youtube.com/watch?v=xNY_-CBFrig