こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コンペティション

功成り名遂げた大富豪が人生の集大成に選んだのは映画の製作。だが、女監督は天才だけれども超変人、主演の男優2人もキャラが立ちすぎている。物語は、兄弟の確執と愛憎をテーマにした映画の撮影前リハーサル風景を追う。セリフのひと言ひと言に込められた気持ちが表現できるまで俳優に何度も繰り返させる監督。クレーンで吊るした巨岩の下でセリフ合わせをするシーンは、いつ死ぬかわからない恐怖と緊張の中でより知覚が研ぎ澄まされてリアルな感情が表出するなどという屁理屈の下で行われるあたり、彼女の尖ったセンスがうかがえる。一方の2人の俳優たちも遅刻したり見当はずれの要求をしたりとわがまま放題。自らの才能を過信する人々のズレた感覚は、一緒に仕事はしたくないがちょっと覗き見する分には楽しい。

ローラの演技指導の下、イバンとフェリックスが本読み稽古に入る。地元の名舞台俳優・イバンとハリウッドスターとなったフェリックスは価値観がまったく違っていた。

お互いに敬意を示すのは最初の挨拶だけで、演技へのアプローチがまったく違うイバンとフェリックスはことあるごとに対立していく。ローラも彼らの個性を尊重しようとするが、自らの演出プランを曲げる気はない。そして3人ともプライドを捨てる気はない。ところが、イバンとフェリックスが娼婦役の女優にキスをする芝居でローラに圧倒的な力量を見せつけられると少しおとなしくなる。さらに今までの栄誉と名声を破砕するエピソードは、新しいものを創造し前に進むためには過去の成功体験を忘れる必要があると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

少しずつではあるがお互いを理解するようになった3人だが、やっぱり一筋縄ではいかない。なんとかリハーサルを最後まで終えるが、製作発表のパーティでまたもや一波乱ある。映画と演劇の違い、ハリウッドとスペインの違い、男と女の違い、芸術家と一般人の違い。あらゆる差異を包括するローラの作品に対する自己評価は、映画は記録媒体に残すことで永遠の輝きを放つと訴える。

監督     ガストン・ドゥプラット/マリアノ・コーン
出演     ペネロペ・クルス/アントニオ・バンデラス/オスカル・マルティネス/ホセ・ルイス・ゴメス
ナンバー     51
オススメ度     ★★★


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