こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベネシアフレニア

中世から続くカーニバルは町の人々が自由と平和を謳歌するためのお祭りだったのに、今や押しかける観光客が大騒ぎする場になり果てている。このままでは伝統は守れない。保存されてきた美しい街並みも汚される。物語は、観光公害に憂慮した古都の有志達が観光客を血祭りにあげていく過程を描く。歴史と伝統に敬意を払い行儀よく異国情緒を楽しむツーリストばかりではない。団体で押しかけ、酒を飲み、羽目を外し、映え写真とリア充動画を撮影する輩にはほとほと迷惑している。そんな観光客をひとりまたひとりと白昼の路上で血祭りにあげていく仮面の男。だが観光客たちはそれもカーニバルの余興と勘違いしスマホを向けている。そんな、観光客の無自覚と地元民の怒りが不気味に交錯する過程は、スリリングかつミステリアスだった。

スペインからクルーズ船でベネチアにやってきたイサたち男女5人組は、さっそく夜の街に繰り出す。翌朝、ホセがホテルに戻らず、イサたちは彼の行方を追うが、ホセの記録は残っていない。

前夜確かに地下にある巨大クラブで踊りあかしたはず。入り組んだ迷路のような細道をたどって刑事と共にその場所を訪れるが、ベネチアの建物には構造上地下室は作れない。さらにハビが首なし死体で発見されアランツァも姿を消す。かろうじてコミュニケーションは取れるが、見知らぬ街では手掛かりはつかめない。そのうち地元の人々がみな悪意を持った目で自分たちを見ているような気分になっていく。一般的な犯罪映画ならここで街頭防犯カメラの映像を解析するはずだが、ベネチアでは景観に配慮して設置されていないのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

イサたちは水上タクシー操縦士や刑事、イサの恋人も含めて廃オペラハウス見つけ、ホセとアランツァを捜す。犯人グループはそれぞれ特徴的な仮面をつけ表情はわからない。それでも、全体的な雰囲気から彼らが抱える憤懣や軽蔑、それでも観光客が落としていくカネに頼らなければ経済が回っていかないという自家撞着は強烈に漂っていた。

監督     アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演     イングリッド・ガルシア・ヨンソン/シルビア・アロンソ/ ゴイセ・ブランコ/ニコラス・イロロ/アルベルト・バング
ナンバー     76
オススメ度     ★★*


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