こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

岸辺露伴 ルーヴルへ行く

この世で最も黒い絵。漆黒の闇のような絵の具で描かれた美しい女と不気味な蜘蛛に、見た者は魂を吸い寄せられ、激しい慙愧の念に苛まれる。物語は、オークションに出品された絵を巡って、日本人絵師と現代のフランス人画家の因縁を探る漫画家の活躍を追う。元々は日本にあった。かかわった男たちが次々と非業の死を遂げていく。漫画家の人生とも深い関係があった。なぜかフランスに渡っていた。それらの断片情報をもとに世界最大級の博物館に乗り込んだ主人公は、呪われた絵の来歴を解き明かすうちに、封印していた哀しい過去を思い出す。有名な肖像画や彫刻を素通りするなど観光気分よりも仕事モードを優先、あくまで創作におけるリアリティを追求する漫画家のストイックな姿勢に好感が持てた。

黒い絵の具に興味を持った露伴はオークションで無名画家の黒絵具だけで描かれた絵を落札する。その絵は盗まれるが奪還、キャンバスの裏には “後悔” という単語が記されていた。

謎を解く鍵はルーブル美術館にあると踏んで、露伴は担当編集の京香と共にパリに飛ぶ。落札した絵は江戸時代の絵師・仁左衛門の作品の模写で本物はバックヤードに保管されている。さっそく美術館の地下へつながる階段を下りる露伴と京香。このあたり、消防士が警備員をしているというのには説得力があるが、セキュリティが甘いのにのには失笑した。その後、露伴フェルメールの未発表の真作を発見し、黒い絵のからくりを見抜く。ヘブンズ・ドアで即解決するのに、観察眼と洞察力で真実にたどり着くところに、露伴の矜持がうかがえる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

仁左衛門が描いた絵に込められた怨念がこの事件の発端と知った露伴は、自身の駆け出しのころの記憶をよみがえらせる。漫画に対する情熱とほのかな恋、創作へのこだわり以外で露伴が心を動かす姿は親しみを覚えた。露伴の仕事場を追い出された京香が「もー」と怒りながらも次の瞬間には気持ちを切り替えるおなじみのシーンも挿入され、ユニークな岸辺露伴ワールドを楽しめた。

監督     渡辺一貴
出演     高橋一生/飯豊まりえ/長尾謙杜/安藤政信/美波/木村文乃
ナンバー     99
オススメ度     ★★★


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