こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リトル・マーメイド

今いるところとは違う世界を体験してみたい! 好奇心が抑えきれない娘は禁を破って旅に出る。物語は、人間の王子に恋をした人魚の冒険を描く。彼に会うためにヒレを足に変えた。代償に美しい声を失った。それでも王子と再会した彼女は、その優しさに触れ幸せな時間を過ごす。だが、約束の刻限までにキスをしないと魔法は解け、望まぬ結末が待っている。人魚族だけでなく小さな島の王国で暮らす人々も人種的多様性に満ち、いかにも “時流に乗りました” 的なあざとさを感じるものの、娘が恋をする相手は男、王子が結婚しようとするのは女、人魚の娘たちの両親も「男」と「女」と、性的指向に関してはマジョリティに従っている。愛し合う男女が見つめ合いキスするシーンの美しさには、生殖と子孫を残すという希望あふれる未来を予感させずにはいられない。

座礁して沈没した船から落水したエリックを救助したアリエルは、エリックを砂浜に残して海に帰る。どうしてもエリックと再会したいアリエルは魔女人魚・アースラと取引し人間の姿になる。

首尾よくエリックの住むお城に入ることに成功したアリエルは、なぜかVIP待遇を受ける。そして物置部屋で骨とう品を物色しているとエリックに声をかけられ、ふたりは急接近。エリックは、話せないアリエルが命の恩人とは気づかないが運命めいたものを感じている。一方のアリエルはエリックと結ばれるための “ 3日以内にキスをする” 条件をアースラに忘れさせられているために、何度もいい雰囲気になっているのに寸止め状態。このあたり、コミカルな演出にしてもよかったのではないだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、ふたりの邪魔をするためにアースラが正体を現して大暴れするが、予定調和的に一件落着する。近年暴走気味のリベラルを謳った破壊的思想を無理に詰め込まず、常識的な理解に抑制しているあたり、むしろ好感が持てた。お互いへの無関心から交流してこなかった陸の部族と海の部族がひとつになって共存を図る構図は「アバター」2作目を思い出してした。

監督     ロブ・マーシャル
出演     ハリー・ベイリー/ジョナ・ハウアー=キング/ダビード・ディグス/オークワフィナ/ジェイコブ・トレンブレイ/ハビエル・バルデム/メリッサ・マッカーシー
ナンバー     108
オススメ度     ★★★


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