こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

M3GAN ミーガン

自律学習で蓄えた膨大な知識とそこから導き出される判断、それは孤独な少女の心を癒すだけでなく学力向上やマナーといった教育まで引き受けてくれる。物語は、人間そっくりに作られたAIロボットの反乱を描く。命令には従うようにプログラムしたはずだった。愛や友情、親切や共感といった人間の善意や良心をアルゴリズムにしたはずだった。だからこそ、親しい2人の人間の間に諍いが起こると、どちらに味方すべきか混乱する。さらに所有者が危機に陥ると救助のために攻撃的にならざるを得ない。仰向け寝から背中を湾曲させて立ち上がったり、四足走行したり、奇妙に体をくねらせたダンスを披露したり、まったくユニークな体の使い方で悪魔の魂が宿ったかのような動きを再現した映像は新鮮で、強烈なインパクトを残す。

孤児となった姪・ケイディを引き取ったジェマは、彼女の友人兼世話係として試作段階のロボット・ミーガンを与える。ミーガンはケイディとの交流を通じて性能を向上させていく。

ケイディを第1ユーザーに指定されたミーガンは、ケイディの悲しみに寄り添いたちまち彼女の親友になっていく。ジェマのように小言を言ったり、同年代の少年のようにいじめたりはしない。隣のオババと猛犬に手を焼いていたジェマとケイディを観察するうちに、ミーガンは何をすべきかを計算し行動に移していく。すべてはケイディのため、だがその演算はケイディに害をなすものは排除するという結論を導く。その過程でミーガンは悪意の宿った表情をみせるなど、まるで感情があるかのようにふるまう。ロボットもまた初期設定が「性格」を決めるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

子供のお友達ロボットがいつしか人間を襲うモンスターに変貌するという比較的陳腐な展開ながら、そこにちりばめられたディテールは豊かな含蓄に満ちていた。ChatGPTの登場で本格的なAI時代に突入した現代、過熱する開発競争とデータ収集にミーガンは警鐘を鳴らす。被覆を失い引き裂かれてもなお上半身だけで這い進むミーガンの本性はターミネーターなのだ。

監督     ジェラルド・ジョンストン
出演     アリソン・ウィリアムズ/バイオレット・マッグロウ/ロニー・チェン/ロリ・ダンジー
ナンバー     109
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://m3gan.jp/