こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース

あのバースからもこのバースからも、遠くのバースからも近くのバースからも、過去のバースからも未来のバースからも、とにかくあらゆるバースのスパイダーマン時々スパイダーウーマンたちが一堂に会したスパイダーソサイエティが壮観だ。それぞれに個性があり、同じ個体は二つとない。一方でクモに噛まれて超人化したという設定が大安売りされ陳腐な存在になってしまった。物語は、ヒーロー活動を通じて世界を救うか父を救うかの二者択一を迫られた少年の苦悩と葛藤を追う。ビルの高層階に特殊糸を飛ばしてスイングする摩天楼空中散歩の目くるめくような体感と、バース間移動時の無重力の底に落下していくような浮遊感は、荒く太い線の力強いタッチで再現され、繊細かつ大胆な独特の世界観を構築していた。

ワームホールを自在に操るヴィラン・スポットが現れ、高校生のマイルスはスパイダーマンに変身して闘う。一方で、スパイダーガールであるグウェンもスポットを追っていた。

グウェンは、ミゲル率いるエリートスパイダーマン軍団の一員でバース間移動を許されている。両親との仲がぎくしゃくしているマイルスはグウェンと行動を共にするうちにマルチバースの世界に迷い込み、父が殉職すると知る。それは変えられない運命、変えてはいけない因果律。だがその掟を破ろうとするマイルスはミゲルたちから追われる身となる。数十ものバースから集まったスパイダーマンの集団がマイルスを追いかけるシーンはドタバタコメディのように収拾がつかず、マルチバースのカオスを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、時空軸が一度変わるともう世界は違っているのだから、元のバースから出た時点でそこは別バースになっているはずで、圧倒的な情報量を詰め込んではいるが、結局まとまりのない展開。マルチバースモノにありがちななんでもあり感満載なのだが、ストーリーに都合のいい部分だけを切り取ってつぎはぎしている感は否めない。日本のアニメのように心情をすべてセリフで説明しないところは好感が持てたが。

監督     ホアキンドス・サントス/ケンプ・パワーズ/ジャスティン・K・トンプソン
出演     シャメイク・ムーア/ヘイリー・スタインフェルド/ジェイク・ジョンソン/オスカー・アイザック
ナンバー     112
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://www.spider-verse.jp/