こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

告白、あるいは完璧な弁護

交通事故の原因を作った。深い山道で目撃者はいない。接触した痕跡はないから、そのままにしておけばうまくやり過ごせたはず。にもかかわらず下手にもみ消そうとしたせいで、人が死ぬ羽目になる。物語は、愛人殺しの容疑で起訴されたIT企業経営者と彼を担当するやり手女弁護士の腹の探り合いを描く。経営者は完璧な作り話をでっちあげたつもりになっている。弁護士は弁護を引き受ける前に真実を知りたいと思っている。愛人殺しと死体遺棄、2つの事件はつながっているが、それを知っているのは経営者だけ。事実と虚偽を巧みに織り交ぜた経営者の供述は一見筋が通っているように見える。巧みにかつ複雑に虚実が入り混じった映像は、良心など持たず、身を守るためには平気で嘘をつき、さらに強固な上塗りをする人間の強烈なエゴがリアルに再現されていた。

密室殺人の容疑者・ミンホは、保釈中に弁護士のシネと面談する。ミンホはかつて被害者のセヒと不倫関係にあり、行方不明になった青年を事故に巻き込んでいたことを告白する。

セヒ殺害に関して、ミンホは現行犯逮捕されている。だが、ミンホは密室に第三の人物がいたと主張する。さらに、交通事故もみ消しもセヒに疑いが向くような供述をする。シネは彼の言葉をひとつずつ検証し、補強したり弱点を補ったりしながら本当は何が起きたのかを探り出そうとする。冤罪の被害者のような立ち位置だったミンホの正体がシネによって少しずつ明らかにされていく過程は緊張感にあふれ、瞬きすら忘れてしまうほどだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

真実を知っているからこそできる作り話と、真実を知らないからこそできる大胆な推理。立場によって同じ出来事も感じ方が違うというレベルではない。ミンホの話の中でのセヒの想いや、シネの推理の中の復讐者の複雑な胸中など、彼らが想像で補った部分までがまるで「事実」であるかのように語られる。それらが並列に扱われるために、彼らの主観が生み出す仮定の世界は混乱の極み。単純な話を無理やり複雑な構成にする必要はあったのか?

監督     ユン・ジョンソク
出演     ソ・ジソブ/キム・ユンジン/ナナ/チェ・グァンイル
ナンバー     116
オススメ度     ★★*


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