こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

君は放課後インソムニア

体は疲れているのに目は妙に冴えている。まんじりともせず夜は明けまた憂鬱な一日が始まる。学校では授業中あくびをかみ殺して過ごしている。物語は、不眠症に悩む男女高校生2人が、星空観測を通して成長していく姿を描く。少年はいつも不機嫌で友達も少なく、シングルファザーとの会話もほとんどない。少女は人間関係に恵まれているが、弱みを見せまいと虚勢を張って生きている。クラスメートなのに口もきいたことのなかった2人は、行動を共にするうちにいつしか距離を縮めていく。クラスで浮いていたのはただ人と接する機会が少なくて自分の気持ちをうまく話せなかっただけ。そんな彼の停滞した人生が彼女のひたむきな明るさに引っ張られていくうちに加速していく過程は、青春のきらめきに満ちていた。

校舎屋上にある天文台に脚立を取りに行った丸太は、昼寝中の伊咲と鉢合わせになる。伊咲も夜眠れずに、昼休みは密かに天文台に忍び込んで睡眠不足を補っていた。

天文台の正式な使用許可を得るために、丸太と伊咲は天文部を立ち上げる。それまで部活になど興味がなかった2人は、活動実績を作るために観察会を企画、友人に協力を仰ぎ町の人々に告知していく。丸太は少しずつクラスメートともコミュニケーションを取り始め、暗かった高校生活に光が差していく。深夜こっそりと家を抜け出してビルの屋上で夜空の写真を撮るシーンは、秘密を共有することで人間関係は深化していくと訴える。恋や友情といった部分をあまり前面に出さずに日常のさりげない風景をディテール豊かに積み重ねた映像は、いまを生きようとする情熱がほとばしっていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

観察会は雨天中止、代わりに2人は星空写真展への応募を決意、夏休みを利用して撮影旅行に出る。その間、伊咲は命に係わるほど深刻な病気を抱えていることが明らかになるが、決して陳腐な方向には向かわないあたり非常に心地よかった。せっかく天文台のある学校が舞台になっているのなら、その望遠鏡で見た宇宙の姿も見せてほしかったが。。。

監督     池田千尋
出演     森七菜/奥平大兼/桜井ユキ/萩原みのり/工藤遥/斉藤陽一郎/田畑智子/MEGUMI/萩原聖人
ナンバー     117
オススメ度     ★★★


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