こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

交換ウソ日記

手紙でいきなり告白された。自分宛てだと勘違いして舞い上がってしまった。でも断りの返事を書くと交換日記を提案された。物語は、ラブレターを渡す相手を間違えた男子と誤解を解かないまま親友に成りすました女子のねじれた関係の行方を追う。好き嫌いがはっきりしていて人気者だがアンチもいる男子と、周りに気を使い自己主張をしない女子。彼は彼女に苛立つが、彼女の “みんなを幸せにする” 心くばりに魅力を感じる。ふたりの言動を見ていると、政策をはっきり口にして支持率も高かったけれど結局暗殺された安倍元首相と、具体的な公約はなく “聞く力” を武器に政権を取り外交や経済で業績を上げた岸田首相の姿と重なってしまう。みんなの意見を調整して落としどころを探る。そんなヒロインの処世術はいかにもポストコロナ世代らしかった。

瀬戸山が好意を寄せる江里乃を偽装して交換日記を続ける希美は、なかなか真実を言い出せない。だが、グループ交際を重ねるうちに瀬戸山と希美の距離は縮まっていく。

こんなことをしていてはいけないとわかってはいる。誰かを傷つけるのも予期している。それでも、瀬戸山の事情を知れば知るほど彼に興味がわいてきて、交換日記を通じて共有する時間を失うのが怖くなる。一度決意しかけてもやっぱり元に戻ってしまう。自分で決めたいのに自分では決められない。誰かに相談できるような悩みでもない。そんな微妙で厄介な希美の乙女心を桜田ひよりが大きな目を見開いて繊細に演じていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

交換日記から一向に発展しない交際にしびれを切らした瀬戸山は相手が江里乃ではないと確信するが、むしろ交換日記の相手こそが本当の自分を見ていてくれていると気づく。それぞれがそれぞれの恋心を胸に、優勝したら願いが叶うという球技大会に向けて練習に励む。設定にかなり無理があったが、希美をはじめ彼女の友人たちとの友情、そして少し屈折した瀬戸山の性格などがディテール豊かに再現されていた。放送部ならもう少し押しが強いほうがいいと思うのだが。

監督     竹村謙太郎
出演     高橋文哉/桜田ひより/茅島みずき/曽田陵介/齊藤なぎさ/板垣瑞生
ナンバー     127
オススメ度     ★★*


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